第6話 勘違いと忘れ物
「おい、待てよ。コネ野郎。」
「はい?」
こいつは何のことを言ってるんだ?
ああ、人違いかな。コネとか言われるようなことした覚えはないし。
「とぼけるなよ。お前、推薦で入ったんだろ。俺らが死に物狂いで勉強してるのにお前は親の権力とかで楽して学院に入ったんだろ!」
どこから聞いたかは知らないが、俺が推薦で入ったことが気に食わないらしい。
まぁ事情を知らないこいつらからしたらそう思うのも仕方がないか。
取り巻きらしきやつらも大きくうなずいている。
というか、俺自身もどうして受かったのかわかんないんだよ。
そこらへんも親父に聞いておけばよかった……。
めんどくさいなぁと思いながら俺は貴族らしき少年たちにこう告げる。
「推薦で入ったのは事実だが、親のコネでとかじゃないぞ。そもそも、この学院はそんなことして入れる場所じゃないだろ。」
「うるせぇ!そんなことどうでもいいんだよ!」
「どうでもいいって…………。」
どうやら、俺のことはどうしても許してくれないらしい。
まいったな。この状況、どうしようか。
気づいたらクラスのやつらの大半の目線がこちらに集中している。
ろくに人と関わったことがないから、目立つのは嫌いなんだよ。
うーんと唸りながら俺がこの状況をどうしようかと思考を巡らせていると
「そこまでにしておけ。」
そう声をかけたのは、2メートルほどの屈強な肉体をもつ龍人族だった。
「騒ぎを起こすな。教師どもに目をつけられたらどうする。入学初日から不良扱いされるぞ。」
「チッ。うるせぇな。そのぐらいわかってるよ。おい!帰るぞ!」
そそくさと逃げるように帰っていく。
「ありがとう。えっと……。」
「レオンだ。レオン・ウェルス。」
「俺は……」
「知ってる。アレス・クリフォードだろ。コネで受かった。」
どうやら俺は有名人らしい。悪い意味で。
「いや……それは……。」
「わかってるよ。それが嘘っていうぐらい。というか、気づいてる奴らも何人かいるぞ。気づいてないやつは中途半端な実力しかないやつか、自分のプライドが許さないお貴族様だけだ。」
まぁそいつらも弱いのしかいないがな。と小さくつぶやくレオン
レオンの話を聞く限り、俺がありもしない噂で友人が一人もできずボッチ……とはならなさそうだな。
よかった……と胸をなでおろしていると
「しかしアレス、お前めんどくさいやつに目をつけられたな。俺も最近知ったばかりだから詳しくはわからんが、結構偉いところのお貴族様らしいぞ。たしかハッシュバルト伯爵家だとか言ってたかな?」
「まじか……」
伯爵家ってかなりの権力を持ってるんじゃ……。
「ま、まぁこの学院は平民も貴族も平等っていうのを理念としてるから……大丈夫だよ、うん……。」
「守っている貴族はいないって聞くけどなー。」
「……」
と、とどめを刺すなよ。
俺の心はズタボロだよ。これからどうすれば……。
「まぁそういうのも実力でどうにかすればいいんだよ。アレスなら大丈夫だろ。」
「簡単に言うなよ……」
ああ、家に帰りたい……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
入学式も終わり、俺はレオンとともに学生寮へと向かっていた。
「気になっていたんだけどさ。アレスはどうやって学院の推薦なんかもらえたんだ?」
「んー俺もわかんないんだよな。親父からは知り合いの教師からもらえたとしか言われてないし。」
「じゃあその人は学院のなかでもだいぶ特別なんだろうな。一介の教師がそんなことできるわけないし。それこそ学院長あたりだろうな。」
ハハハと笑いながらレオンの話に耳を傾ける。
もしかしたら推薦をくれたのはその学院長だったりして。
まさかな……。
そんな感じのことを話しながらレオンと他愛もない会話をしていたら目的地である学生寮についていた。
「はえー。でかいな。」
「そっか。アレスは見るのがこれで初めてだもんな。俺は登校日に一度、生活に必要な荷物とかを置きに来たからな。あれ?そっちは持ってきてんのか?」
「ああもちろん着替えとかはここに……」
あ、あれ?そういえばどこにやったんだっけ
ま、まさか。
「どうしたんだ?」
「泊まっていた宿に忘れた」
しょんぼりとした声でそう告げる。
「じゃあ、これから時間もあるし着替えとかを取りに行くついでに明日の授業に向けてなんか買いに行くか。」
「そうだな。そうしよう。」
ということで俺のミスをきっかけに出かけることになりました。
一時期はどうしようかあせったけど、信頼できる友人もできました。この先なんとかなりそうです。
打倒!貴族!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます