第5話 リーデル帝国学院
帝国に到着してから二週間ほどになった。
今日はリーデル帝国学院の入学式の日だ。
一応、学院へ通うために必要な手続きはすでに一通り済ませてある。
学院の授業は一つ一つのレベルが高いと聞く。
入学するのも難易度が高いが、それからの授業に追いつけず
留年や退学をする人が一年の間から多く、進級するのも困難らしい。
そんな中でどれだけ自分の力を引き出し、成長できるだろうか。
それに森のなかで何年も過ごしてきたから人とのコミュニケーションが
うまくとれない可能性もある。
オッサンとはその場のノリで何とか乗り切れたがあれは相手側のコミュニケーション能力が異様に高かっただけで俺自身の力ではない。
これからの生活で同年代の友人ができるだろうか。教室の中で一人だけ隅っこのほうで座ってるとかないかな……。
そんなことを考えていると学院の門の前にいつのまにか着いていた。
大事なのは第一印象だ。教室にはいったら元気よく挨拶する。
関わりやすい雰囲気を作ることが大事だ。
大丈夫。俺ならできる。何も問題はない。
ふぅと小さく息をつく。
「行くか。」
不安に駆られながらも、俺は覚悟を決め門をくぐる。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「うへぇーーーー。」
バタンと大きな音を出しながら、机にからだをゆだねる。
教室に来るまで2時間ぐらいは椅子に座って学校長のながーい話を聞かされたから尻が痛いんだわ。
あとどうやら入学試験と入学式の間に登校日があってその際に友人関係が出来上がっている者もいて現在進行形でボッチです。
ちなみに今俺がいるのは1年のCクラスだ。
クラスはA、B、C、Dの4つがあるらしい。
入学試験の成績が均等になるようにクラス分けされているらしい。
だからAクラスが一番優秀でDクラスは落ちこぼれとかそんなことはないらしい。
その証拠に今回の入学試験の主席はわれらがCクラスにいるらしい。
窓際に座っている金髪のエルフ族の少女だ。
入学式の際に新入生代表挨拶だとかで生徒の前に立って話をしていたのを覚えている。
今まで寝ていたやつらがそのときだけ真面目に話を聞いていたのが面白く思わず笑ってしまった。
その際にいろんな奴に変な目で見られてしまったのは内緒。
まぁそれだけその少女の美貌は大勢の目を引くのだろう。
また彼女以外にも龍人族や魔力の波長からして魔族らしき者もいたりなどこのCクラスには化け物じみたやつらが何人かいる。
そんなことを思っていると教室の扉が開き、教師と思わしき女性が入ってくる。
「はーい。皆さん席についてください。」
優しい声で俺たち生徒にそう呼びかける。
生徒全員が座ったタイミングで女性の教師が口を開く。
「私はこのCクラスの担任をするレイラ・グロリアスです。担当は魔術学です。よろしくお願いしますね。」
ほんわかした雰囲気の穏やかそうな先生……というのがこの教室にいるたいていの奴らの印象だろうな。
優しそうな顔をしておいてその身に纏う魔力はかなり洗礼されている。
この学院の中でも五本の指に入るほどの強者だというのがわかる。
この事実に気付いていないやつは現時点ではあまり警戒しなくてもよさそうだな。
逆に気づいているやつらがかなりの実力者だろうな。
「さて、入学したてのあなたたちに言うのは少し早いかもしれないけど1ヵ月後には長期にわたる魔物討伐の合宿授業があります。教員側が決めたメンバーと一緒に協力して課題を解決していくのが目的の授業ですね。それに向けて明日からの授業は剣術や魔法、魔術などの戦闘訓練が中心の授業となります。各自、入学試験の際に使用した武器などを持ってきてくださいね。」
そう告げるとレイラ先生は教室を出ていった。
なんかいろいろと疲れたな。
入学式で長い話を聞かされて尻が痛いし、やたらと緊張感のある先生が担任になったりとかな。
はぁとため息をつきながら、席を立つ。
たしかこの後は学生寮に行かないといけないんだっけか。
めんどくさいなぁと思いながらトイレに向かうため教室を出ようとすると、ガシッといきなり肩をつかまれる。
「おい、待てよ。コネ野郎。」
どうやら疲れるにはまだ早いみたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます