第15.5話 カップラーメン

 ある日私はカップラーメン工場へ行った。カップラーメンを内外に発表してからというもの、注文が後を絶たないので工場を増設するかを検討しているところだ。その検討材料にするために工場視察に来た。まあ、本来の用件は新しい味の話し合いなんだけど。


「こんにちは、工場長。」


「シュウヤ様。よくいらっしゃいました。こちらへどうぞ。」


 工場の中の応接室に入った。工場の廊下を歩いているときから良い匂いがしてきている。でも今日はたくさん試食するから腹は満たされるだろう。


「早速ですが、こちら。この表からどれを4つずつとってもいい感じにコストを抑えることが出来る食材リストです。」


「提案なんだが、ちょっとこだわった材料でお高いカップラーメンも作ってみないか?」


「材料を良いものにして値段を少し高くする...面白いですね。例えば何があるでしょうか?」


「例えば仕入れ値が高いエビをふんだんに使うとか?色々な方法があるよ。ただ単に量を増やすのもありだね。量を増やすなら容器を新しく作ればいいから作りやすいかな?」


「そうですね。『ビッグサイズ』もありかもしれませんね...!来週までに生産できるように容器も受注しておきましょう。」


「ありがとう。」


「ではお次はこちらへ、視察へ行きましょう。」


 そうして僕たちは清潔なエプロンを着て工場の内部、研究室に入っていった。工場の核とも言える大事な場所だ。


「来週の新しい味はどうにかできそうか?」


「ええ、なんとか明日には間に合いますよ。来週は『エビ少し多め』です。お楽しみに。」


「なるほど、楽しみにしておくよ」



 あいにく食べることは出来なかったが、これから食べることの出来る量が増えるのは嬉しいことだ。帰りに近くの店でカップラーメンを1つ買っていった。


「ほう、今週の味は『野菜ましまし』か...楽しそうな事を考えるようになったじゃないか。そして来週は『エビ少し多め』か...僕の楽しみがますます増えていくな。」


 ここで僕が国を運営していながら聞いた「カップラーメンがあって良かった」というエピソードを紹介しよう。



 私はある国のある職員。遠征でとても寒い地域へ行く事になった。だが最近は安心して行けるようになった。そう、この「カップラーメン」とやらがあるからだ。私の国では第三国経由でサンジーフ、オルネジア、そしてこの国に来た代物だ。これは温かく栄養もとれる味が濃いめのスープだ。


「へへ、時間になったな。食べよう...」


 私はスープを一口飲んだ。うん、いつもの味で安心している。そして次に麺を食べてみた。いい感じに味が染み込んでいる。心身ともに温まった。


「今日も美味しかったな。」


 明日も続けて移動ができそうだ。私はこの食べ物に出会えて本当によかったと思っている。



 私はノルド。最近ミサキ殿に勉強を教えている老いぼれだ。私は幸いなことに衣食住をすべて国が用意してくれている。しかも今日は新しいカップラーメンの味が出る日である。言うのは恥ずかしいが、とても楽しみにしている。


 もともと貴族の子どもたちに勉強を教えていたため衣食住は前々から完備されていたが、食事がありきたりすぎるのだ。栄養価と健康と安全には気を使っているのだろうが、なぜか美味しくないのだ。今考えると場所だとか、品だとかそういう所に気を配りすぎていたのかもしれない。


 でも最近は食事の時はあまり周りに気を配る必要もないのだ。いつも食堂で国から貰う食券を使って好きなものを食べている。あの頃食べれなかったものがたくさんあったため、毎日のご飯の時間が新鮮な気持ちだ。


「でも今日は、私の部屋でご飯を食べる。なんと言っても今日は新しい味が出るのだから。これは買わずにはいられないのだ。」


 私はカップラーメンが買えるお金と食券を時々国民と交換して毎週この時間を楽しむようにしている。


「3分経ったかの。では、いただこう。」


 ...やはり汁だ。この動物から取っただしの汁はとても美味だ。今日はエビのエキスが入っているらしい。確かにいつもよりエビ感が多いかもしれない。とても良いな。そして麺も食べた。うむ、これは変わらず美味しいな。


「はあ、あっという間に食べてしまった...」


 これが、私の最近のルーティン。本当に良い思いをさせてもらっている。また来週も楽しみだ。



 と言って温かいメッセージを多く寄せてきてくれる。これはとても嬉しいことだ。僕もカップラーメンをこっちの世界に持ってきて作ってきて良かったと言う感じだ。しかもノルドさんはカップラーメンが好きという意外な事まで知ったし。


「...大盛りの次は減塩でも作らせてみようかな。もっと食べてくれる人たちが増えるだろう。」


 工場から私の家に戻ってきた。今日は工場視察以外大きな仕事は無かったため、早めに寝た。


「いつかは缶詰工場にも行かなければな...ふぁあ。」

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