第12話 今後の国の話

「お金の心配ならございませんよ。シュウヤ殿。」


「誰...ですか?」


「申し遅れました。私はこの世界の管理者Aこと。『アイゼンフェルト』と言います。」


 僕は思い出した。この人があの時の「管理者A」なのか...とても紳士的で優しそうな人だなと思った。


「それで今日はこの国に何の用ですか?」


「ええ。今日はこの国にプレゼントがあります。何もそれはあなたが自由に決めて良いものですけど。『お金の心配がない』と言うのはこのプレゼントでは永遠の富すらも受け取ることも出来るということです。」


「...そうなのか。少し考えさせてくれ。」


「ええ。あなたの良い回答を待っております。」


 僕が真っ先に思ったのは、「お金はいらない」と言うことだ。別にお金は稼ぐことも出来るし、永遠の富を手にすると楽しみが無くなりそうな気がするのだ。となると国力の強化か?でもこの国には配下のような国があるから今は必要ない。


 となると何だろうな...そういえば最近料理だけでなく、食品の生産にも手をつけたいとも思っていた。お菓子や缶詰を量産すればきっと売れるだろうな。日本はお菓子も缶詰も美味しい。このまま文明的にもこの世界の平均よりも先を行っている日本の物を普及すれば自然とこの世界もさらに豊かになる。


「じゃあ、日本のお菓子や缶詰などを大量生産出来る巨大な工場をください。」


「なぜだ?」


「この国を豊かにしてみたいんです。あとは...『日本』の良いところをサンジーフ王国が代わって宣伝したいんです。」


 一瞬間が空いたからだめかと思っていたけど、僕にとっても良い返事が返ってきた。


「...素晴らしい!これぞ私が求めていたシュウヤ殿の望みでございます!世界を豊かに、平和に出来るのはシュウヤ殿のような人しか居ないのです!分かりました!今すぐにでも初めましょう!」


「ありがとう!じゃあ、よろしくな!アイゼンフェルトさん!」


「...!」


 僕らは自然と握手を交わし、明日から建設の工事を始めることで同意した。結局また食べ物関係になってしまったな。でも今度こそはその他の日本文化も布教していきたいな。



「今日初めて私のことを名前で呼んでくれた人が出てきたぞ。そう、あのシュウヤだ。」


「良いじゃないですか。管理者、おえらいさんすらも名前で呼ぶ人なんてなかなか居ないですよ。その人のこと大事にしてあげてくださいね。」


「うむ、初めて、いや厳密には2人目の名前で呼んでくれた人だな。『真の1人目』もいい人だったし、その『2人目』、シュウヤもいい人だったな。うん、大事にするよ。ていうか、お前らも私のことを名前で呼んでも良い立場なんだぞ?」


「ほら、今までは絶対にそんなこと言わなかった。やっぱりあの人に会ってからだいぶ丸くなりましたね。」


「...うるさいなあ」



 朝が来た。雲は1つ位あるだろうけど、晴天だ。僕らは国の大工などを集めた。最初の頃は雇っていたからな...この国もだいぶ変わったな...大きくなったし、有名になった。


「さあ皆さん!これはこの国、いや世界をより豊かに、平和にするための1つの通るべき道です!食べ物こそ世界を豊かにすると僕は考えます...!一緒に頑張りましょう!」


「「「はい!」」」



「ふう。久々にちょっと忙しかったな。」


 僕は現場監督をしつつこれからの国政のあり方についても議論していた。先程リサ、サラ、バレット、ヒカルと僕のいわば初期メンバーと商人のビーツを呼んで、会議をしていたところだ。


「今後の国政のあり方について、様々な立場から意見をいただきたい。」


「国を発展させると、悪い輩も出てきます。なので警備体制も増強すべきです。」


「俺は食品を扱う仕事が増えるなら、衛生管理も徹底すべきだと思うぜ。なにか食品に少しでも問題があっちゃあ評価が下がっちまうからな。」


「法律強化も必要だと思うわ。そうでしょ?サラ?」


「うん...それが良いと思う。既に新しい案もあるし...」


「私は新人の商人にこの国を紹介して、新人の研修の場にしたいと思っています。もちろんお代はしっかり払いますし、これはこの国の事を知っていただくきっかけにもなります。」


「そうか、じゃあ明後日までにまとめておこう。ありがとう、みんな!」



「やはりだいぶお疲れですよ、シュウヤ殿。」


「まあね、でも楽しい疲れ方だから良いんだよ。」


「この国には疲れ方にも『楽しい疲れ方』があるんですか...興味深い...あの、もう少し見ていても良いですか?」


「もちろん!構わないよ。あと『楽しい疲れ方』はこの国だけにあるものじゃ無いよ。」


「...面白い。私の見ている世界も意外と狭い物だな。」


 工事は着々と進んでいった。大工さんたち曰く、もとからあるライフラインのおかげでスムーズに進んでいるらしい。ここでも僕は貢献できたな。まあそういう所にもだいぶこだわっているつもりだから、まあまあ良いとは思う。


 でも、それを継続するには適度な休憩も必要だよね。僕にとって国民一人一人はとても大事な人だ。誰一人もかけてほしくない。今日はもう終わりにしよう。


「みんなー今日はもう休もう!今日は僕が晩御飯をおごってあげるから!」


「「「ありがとうございます!」」」


「...アイゼンフェルトさんもどう?おごってあげるよ?」


「では。お言葉に、甘えて。」



「管理者、帰りが遅いわね。せっかく今日は『お友達出来た記念』のパーティーをしようと思ったのに。」


「本当ですよ、まったく。どれだけあの国が気に入ったんでしょかね。」

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