第3章 異世界にも日本を布教させる編

第11話 借金返済

 旅行から帰ってきた矢先、電話がかかってきた。僕は気分良く受話器を取った。


「もしもし!」


「もしもし?わしじゃ、ワズじゃよ。」


 「わし」って言う時点で大体誰かは予想がつく。でも何か用があるのだろうか...?思い当たる節がない。


「ああワズさんか、なにかありました?」


「なにかってなんじゃよ!お前昨日の旅行のときに出店したらしいじゃないか。その時のビラわしの国の宣伝も入れたでしょ!」


 そういえば入れたっけな。僕らに大きな影響を与えてくれた国だから宣伝しておきたいなあと思ってやったんだ。


「このビラにもっと宣伝内容入るよな?ヒカル。」


「確かに、あと5行は入りますね。」


「...じゃあ、何かとお世話になっている。オルネジア王国の宣伝でも入れてみるか?」


「それは良いですね!書いておけばワズ様も喜ぶでしょう!」


「じゃあ入れておくか。『歴史ある国だが新しい物好きなどこか新鮮な国、オルネジア王国...』っと。」



 でも、それは少しまずかったかな?


「確かにそうしましたね。何かまずかったですか?」


「何を言っているんだ!お前のそのビラの効果でわしの国への観光客がどんと増えたのじゃよ!お前さんがヒカルと一緒に宣伝していたと聞いた時、わしはとても嬉しかったぞ!」


 感謝する方の電話で良かった。最初の言葉を聞いた時お叱りの電話かと思った。まあでも色々考えてても感謝されたのだから、感謝に対する感謝をしないとな。


「いえいえ、こちらも色々と影響を与えてくださった国のことなので、これくらいは当然しますよ!」


「...そこでな、いきなりじゃが、わしらの国はわしらの国なりにお礼をしたいのじゃ。1つだけ何でも、出来ることなら何でもしよう。なんでもあげよう。」


 僕は考えた。最新の調理器具?いや少し悪いが向こうの国はあまり良いものが無いだろう。食材?いやもうほとんど足りている。鉱石?必要かもしれないが、海の向こうの鉱石採取が盛んな国と数週間前貿易を結んだ。それじゃあ足りないもの、欲しい物って...


 あ。と僕は思いついたけれど、良いのだろうか。僕が考えた欲しい物は結構大きい物だから、こんなに気安くもらってしまって良いのだろうか。まあ、とりあえず聞いてみることにした。


「少し恥ずかしいが、僕らの国の借金を返せるだけのお金をくれないか?あと数億Gだが、どうだ?もし無理ならそれで良いんだが...」


 僕がそれを提案した数秒後に、ワズの笑い声が聞こえた。


「ははは!良かったぁ!そんな程度のことで。」


「...どうしてですか?」


「いや、大体の国はこういう時に土地や国の一部、または軍事力を要求してくるんじゃよ。それくらいの覚悟で聞いたが、緊張したわしが馬鹿じゃった。数億Gくらいなら任せておけ。今すぐにでも持っていこうじゃないか。」


 僕は望みが小さすぎたのかな。食材よりも鉱石よりもずっと価値がある「国の土地」なんかを選ぶ国が大半なのか...だからワズは緊張から開放されたように笑っていたのか。でも僕とヒカルはビラを配っただけだし、それだけで土地なんかを貰うわけにはいかないな。


「じゃあ、お金。よろしくおねがいします。」


「わかった!」



 僕らは2人で中央街の銀行に行った。ワズは大量のお金が入った袋を持っている。


「..では、ここにまとめてお金を入れてください。」


「ここか...」


 今や有名な二人の王が世界の中央の街に来ているとあって、見物客が大勢いた。借金を返しに来ただけなのにな...


「メッセージ: 入金が完了しました。計算します...」


 緊張の瞬間。これで借金が返済し終わるか決まるのだから。


「メッセージ: 計算が終わり、借金がすべて返済されました。今までお疲れ様でした。」


 僕はそのメッセージを聞いた瞬間、飛び上がって喜んだ。それにつられてワズも喜んでいた。今までの努力が報われたのだ。


「やったぁ!やっと返済できたぞ!」


「よくやったなシュウヤ!本当にすごいことじゃ!」


 考えれば数ヶ月。1年も満たずに返済できたのは本当にすごいことだと思った。僕は本当に開放された気分で、嬉し涙を流した。


「ここまで色々とあったなぁ...」


「そうだな、思い出すと懐かしいな。」


 始まりはたった4人で運営を始めた小さな国だったが、いつの間にか国民が1000人、4000人と行き。今や5000人を超えるちょっとした大国になっていたんだ。感覚は殆どないけど、とても嬉しくて喜ばしいことだった。



 僕らはそれぞれの国に帰った。リサなどには国民を集めるように頼んでおいた。


「ええ、皆さん。嬉しいお知らせがあります!なんと借金が『すべて』返済できました!これで国民の皆様にもっと奉仕することが出来ます!皆さんのおかげです!」


 宣言した瞬間。住民は歓喜に包まれた。「やった!」の声や「ついにだ!」という声が聞こえてきた。あと一部の人がこう言った。


「いや!シュウヤ様には既にたくさんお世話になっているからな!これはシュウヤ様のみんなに対する優しさがここまで来たとも言える!」


「そうだそうだ!」


「シュウヤ!シュウヤ!シュウヤ!」


 国中に「シュウヤコール」が響き渡った。これは僕の努力でもあると言ってくれて、本当に嬉しかった。でも国民の今までの頑張りもある。だから今日は盛大にお祭り騒ぎをしようではないか!


「でもその前に恥ずかしいからシュウヤコールやめてぇ!てかなんでバレットも混じってるんだよ!ヒカルも!」



「こんな短い間に借金を返すことが出来なおかつ栄えた国はありませんでしたね。管理者よ。」


「うむ、借金は延長しても良かったのに、よく返済日までに返すことが出来たな。しかもあんな額を...」


「私達も彼らの頑張りに応えてあげる必要がありますね。」


「ごもっともだな。考えておこう。この国にどんな応え方をすれば良いか。とりあえず今日はその『お祭り騒ぎ』を見てみようか。」



 「借金返済記念パーティー」と題し、様々な料理を振る舞った。日本食もジャンクフードも酒も。まさに理想の通り「お祭り騒ぎ」になってくれて本当に嬉しかった。みんな嬉しそうにワイワイしている。


「ははは!シュウヤももっと飲めよ!俺はもうこんなに赤くなってんだぞ!」


「ハハハ...ありがと、バレット。」


 パーティーを楽しんでいるのと同時に世界進出のことも考えていた。食品の輸出はもちろん。建築やその他文化を教え合ったりしてみたい。そしたら世界中がもっと繋がることが出来る。でももっと先の話になるだろうな。


 でもこれは大きな借金をしてまでも叶えてみたい夢だ。人と人が交流することには借金の額以上の大きな価値があるのだ。僕はこの世界上の人やモンスターが1人、1匹もはぐれることなくみんな楽しくありたいのだ。


「でも、また借金か...やっぱりお金を貯めないとな。」


「―お金の心配ならこの国にはございませんよ。シュウヤ殿。」


「...え?」


 聞いたことがない声だったが、どこかで知ってる人のような気がする。誰だろう?そして突然入ってきて何の用だろう?

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