第3話
海神に身の上を話してから数週間程経った頃、彼女は見知らぬ少女を一人、連れて帰ってきた。
少女は私同様、木に磔にされ満ち潮と共に海に生きたまま沈められたのだという。しかし、その少女は全くの無傷で暴行の形跡は無い。着ている物も清潔で、わりと高価なものだった。
海神は私の話を聞いて憤り、あの村で海産物が全く捕れぬようにしたという。
生計をほぼ全て漁業に依存する村は困窮し、私の件で海神が怒っているのだと結論付けた。
ただし、私への非道な扱いではなく、傷物の娘を不潔な状態で海に沈めたから怒っているのだろうと判断したそうである。
なので、身を清めた乙女を差し出す事で怒りを鎮めようとしたのだ。
「皆、一体私についてどんな印象を抱いているのかしら…」
海神は呆れた顔で溜息をつき言った。
「生贄を差し出されたから満足したと思われるのは癪だけど、これ以上そんな事をされても困るわ。」
その村では、再び海産物が捕れるようになり人身御供は行われなくなった。
娘は村に帰っても居場所は無いと言って泣くので、しばらく屋敷に滞在した後、江戸の染物屋へ働きに出た。何でも、海神が江戸の海域を治める海神に話をし、そこから染料の神へ繋いでもらったという。
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