混沌の世界で愚者は嗤う

鳴深弁

発熱



何度目の目覚めだろう


息苦しさと


身体の痛みと


大量の汗



腫れた首元にそっと触れた



ああ


大丈夫



熱が出ても


息苦しさや


飲み込むことさえ辛くても



私は何度もこれを繰り返してきた



どうせ



死ねないんでしょう



誰が見てるわけでもないのに


嘲笑うような笑みを浮かべた




こんなに苦しいのに



身体は悲鳴をあげているのに



迎えはきてくれない



しぶとい身体だ



色んなことができなくなって


結局選択肢も狭まって


灰色の世界に私を留め置く




もう


いっそ


迎えに来て欲しい



腫れ上がった両方の首元は


痛みを訴えて熱を持つ



ひゅーっと溢す息苦しさは


通る度に傷みを刻む



高熱に魘された身体は、


うまく眠ってもくれない



汗が出てきたなら


まあじきに回復するな



慣れた身体は自身の体調をよく分かっている



倒れてからじゃ遅いのに


いつもこうだ


倒れてから気付く愚か者




私を心配してくれる人はどのくらいいるだろう


私が死んだら泣いてくれる人はいるだろう


そう疑問に思わないくらいに私は果報者だ



でも


振り向いて欲しい人からの連絡は



一切ない



結局


こんなものか、と嗤った



ある意味


良かったではないか。



何かの機会が欲しかった



諦める機会が欲しかった



貴方を線引きする機会が‥



胸が軋むだけ。



熱に浮かされて


酷い頭痛と目眩で視界が歪んでるだけだ


汗が枕とシーツにたれるだけ


水を飲もうと


痛む身体を起こす際に


顔の汗が滴った



それは



まるで涙のようだった





水を飲むのもキツイが


迎えが来ない以上


生かすしかない。



震える手で飲み終わり


重力に身を任せて、ベッドに崩れ落ちる




グルグルと回る



この視界のなか



浮かんだのは貴方の遠い背中




せめて



悪夢でも良いから



貴方に逢いたい




滴るものは、あせか、なみだか




混沌の世界で、愚者は嗤う





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混沌の世界で愚者は嗤う 鳴深弁 @kaidanrenb0ben

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