3.胸のざわめきと、気配。
「あ、危なかったね! モンスターって、本当にいるんだ!!」
「そう、だな! マジでビックリした……!」
――ダンジョンを飛び出して、山林のど真ん中。
俺と涼子は大きく肩で息をしながら、時空の歪みを見つめていた。モンスターはダンジョン内においてのみ生息できるので、外に出てくる心配はない。
それでもまだ、心臓はとかく速く脈打っていた。
この高揚感は息が上がったことでの一時的なものか、それとも……。
「……あ! そうだ、たっちゃん! 配信は!?」
「そうだった! ……って、とっくに切れてるな」
「そっかー……みんなにモンスター見せられなくて、残念だね」
そう考えながらも配信画面を確認すると、そこにはあったのは心配のコメント。
どうやら初配信は、多くの人に不安を与えてしまったようだ。俺はひとまず代表して、無事の報告をコメントとして残すことにした。
するとすぐに、視聴者からの返信がくる。
『初見だった者です。とても安心しました、良かったです』
『でも普通、武器も持たずに女の子を前線に行かせるってあり得る?』
『次回までの反省点にしてもらうとして、チャンネル登録しておきます!!』
それらは、本当に心の底からの安堵だったのだろう。
今回きてくれた視聴者はみな、優しくチャンネル登録をしてくれた。それと同時に、無知な俺たちにアドバイスを送ってくれる人も。
涼子と一緒にそれを確認して、今日のところは解散となるのだった。
◆
「……そっか。武器が必要、か」
そうして実家に戻り、俺は自室でボンヤリと昼のことを考える。
武器を持たない女性を前線に置くな、というのは至極もっともな意見だった。それとなると、今後の演者は男性である俺ということになる。
しかし、いったいどのようにすれば映える絵になるだろうか。
それを考えてしばらく、俺はおもむろに立ち上がって庭にある倉庫を漁り始めた。
「んー……と? この中で、使い慣れてる武器といえば、やっぱこれか」
そして、ある得物を見て一人で納得する。
これならきっと、次回からはうまくいくだろう。
「……って、ずいぶん真剣に考えちまったな」
そこまで考えて俺は、自分がダンジョン配信に心惹かれていると気付いた。
だが、仕方のない話だろう。男子たるもの、心はいつまでも少年なのだから。非日常の中に身を置くと、どうにも気分が高揚してしまうものだった。
そんなわけで、俺は次のための準備をして寝床に就く。
「しかし、今日は疲れたな……」
身体を横たえると、身体がドッと重くなる。
しかし、どうにも目は冴えてしまって、上手く寝られないのだった。
◆
――一方その頃、某匿名掲示板では。
『今日からダンジョン配信始めた二人組なんだけどさ、見た人いる?』
『あー……なんか、片田舎のダンジョン、ってやつだっけ』
『そうそう。あんな田舎にダンジョンあったんだ、ってなってアーカイブ見たよ』
ダンジョン配信初心者二人組――達治と涼子の話題が、それとなく持ち上がっていた。しかしどれも物珍しさというか、辺境の地にできたダンジョンへの興味が大きい。
配信の質というより、新しい刺激を欲している、という感覚が近いだろう。
住人たちはみな一様に、こう思っていた。
『まぁ、暇だったら見に行ってみるか』――と。
それは本当に、何の気なしの好奇心。
しかし達治や涼子を含め、この時は誰も思っていなかった。
次回の配信が、いきなりの『神回』になる、ということを……。
――――
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