第2話 まるでこのダンジョンは宝物庫みたいだぁ
「――結論から言おう。このダンジョン、何でもある」
慟哭から半日。いや実際にはどれぐらい経ったか分からんけど体感それぐらい。
泣いてても仕方ないと思った俺は、取り敢えずダンジョン内を散策していた。
「チート能力にチート魔道具がてんこ盛り!! まるでテーマパークみたいだぁ!!」
流石に最難関ダンジョンの最奥。ご褒美と言わんばかりの宝がいっぱい。
得た能力は沢山あるが理解出来ていないものもあるので今は割愛とさせていただく。
「んで、ついさっき見つけたこれは……」
手元には何か掌サイズの機械のようなものが。ありがたいことに取説まで付いている。
異世界らしく武器や魔導書が多かった中で、一際異彩を放つそれは。
『超高性能配信用アーティファクト
どんな環境下でも配信・動画の録画が出来ちゃう夢のような一品。通常配信媒体に接続出来ないような深いダンジョン内でも全く問題無く使うことが可能です。また、衝撃や熱など本来ならばアーティファクトが壊れてしまうような要因も全てシャットアウト。現存する物の中でも最高峰の配信用アーティファクトとなっております――』
「配信用!? え、ここから外に向けて配信出来ちゃう感じ!? なんともまぁ……」
元の世界で配信をやっていたから心得はある。そして何よりも重要なのは。
「というか、これ使えば外に助けを求められるんじゃないか!?」
正直どんなチート能力や道具を手に入れても「あーはいはい、どうせ使えんのよ。ペッ」ぐらいの気持ちだったのだが、こればっかりは素直に喜ばざるを得ない。
早速起動。もはやどんな世界に来たのかも分からないが、これで確かめることも出来る筈。
自動で配信出来るサイト(のようなもの)に接続され、それを見てみると。
「配信、人気コンテンツ過ぎて草ァ!! ものすっごい数の人が配信してるぅ!!」
まるで自分が元居た世界にいるのではないかと勘違いするぐらいの盛況ぶり。
とはいえ内容がまさに異世界らしい。勇者パーティーは配信なんかするなよと。
「今の俺の状況……絶対ウケるだろ。人は他者の不幸が大好き」
ちらほらと『ダンジョン攻略してみた』みたいな配信も見受けられる。
俺の場合攻略してみたとかじゃなくて、ガチの救難信号なのが悲しいところ。
「となればまずは準備からだな……。一先ず配信に使えそうなものを探そう」
勇み足で無策に配信を始めるのは三流のやること。準備は入念にするべきだ。
元の世界で収益化すら出来てなかった俺が、本当の配信というものを教えてやろう。
そんなこんなで散策再開。因みに半日歩き回って階段の一つも見つからない程度には現在地は広く、小部屋から大部屋まで沢山のフロアがあるのだけは分かっている。
大抵一つのフロアに何かしら宝物があったのだが、今足を踏み入れた場所は違った。
「何も、無い? 無いわけねーだろ、ここはダンジョンの最奥だぞ!?」
帰還用クリスタルまで用意されてる(思い出して少し泣いた)最難関ダンジョンの最奥に外れの部屋などあろう筈もない。一見何も無いだけで何かがあるだろうと。
という訳で数時間前に手に入れたスキルをフル活用してフロアを探る。
こんな啖呵を切って何も無かったら本当に恥ずかしい。配信してなくて良かった。
「……あ? 壁越しに、空間みたいなのが……」
通路から入ったフロアの一番奥。そこは一見するとただの壁だったのだが。
壁の裏側にそれなりの広さの空間がある。つまりこれは、そう。
「か、隠し部屋だぁぁぁぁ!! 畜生、配信してれば取れ高エグかったのに――」
すぐさま適当なスキルを使って壁を破壊。見せかけ以上に脆く跡形も無くなった。
はてさて、隠し部屋といえばレアアイテムと相場が決まっている。と、思っていた。
「――ッ!? そっちのパターンか……!! 配信してなくて良かった……!!」
もし配信していたら大事故。こんなショッキングな映像を流したら即刻BANされる。
その先に見えたのは、厳重なまでに鉄格子で覆われていた牢獄と。
「すぐに助けてやる!! 頼むから生きててくれよ!!」
その牢獄の中に一人きりで囚われていた、眠っているような様子の謎の少女だった。
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