9ページ目.本気!?
わたしは恐る恐る鞄から原稿を取り出した。
「あの、描いてる漫画なら、実はいま手元にあるんです……」
そう言っておずおずと先輩方に原稿を差し出す。
「えっ、いまあるんだ! それはちょうどいいな。ちょっと拝見」
「わたしにも見せて見せて!」
「俺も俺も!」
嫌だ、恥ずかしい。
何だかわたしの部屋の中……、ううん、頭の中を見回されている気分。
変態チックな漫画なので絶対引かれる。
そして笑われるんだ、きっとそうだ。
「ワハハハハ!」
わたしの予想は当たって、由良部長は声を上げて笑った。
「ヒャヒャヒャ! マジか!?」
嵯峨先輩も大笑いしている。
「へぇー、意外! ふわりちゃんこんなマニアックな漫画描くんだ!?」
衣川先輩も目を丸くして、驚きと笑いの混ざった表情をしている。
「けっこう攻めた内容の漫画描くんだね。女子同士の恋愛でフェチ系なんて」
由良部長がわたしの顔へ視線を移す。
「あの、変なもの見せて……すみません……」
わたしは身を小さくして俯いた。
「いや、そんなことないよ。絵は上手いし、女の子も可愛いし。そうだ! 今年の漫画部の代表作はこれでいこうか?」
由良先輩がみんなに言った。
代表作……?? どういうこと?
「たしかに。人を選びそうな内容ではあるけれど、こんなの今までにないアイデアだから、他の高校の漫画部の作品とかぶらなくて良いかもしれない」
嵯峨先輩も賛同した。
「うん、いいかもしれない。思い切って新人さんのアイデアを取り入れて、うちの漫画のイメージを変えてみるのもいいかも。ふわりちゃんに新風を吹かせてもらおう!」
衣川先輩も賛成みたい。
「あの、代表作って……どういうことですか?」
僭越ながら、新人のわたしが聞いてみる。
「ああ、うちの漫画部では、毎年、その年の部としての代表作を作るのが習わしなんだ。そしてその作品を12月に行われる全国高校漫画コンクールに出すのさ。でも、去年、一昨年とみんなアイデアが尽きちゃってるのか、それとも才能が無いのか、出す漫画が似たような内容の物が続いて、他校も流行りのストーリーが多くて同じようなものばかりで。それで、ふわりちゃんのこの漫画なら今までに無い内容なので目立つかなって思って」
由良部長はわたしに笑顔で話してくれた。
なるほど、そういうことだったんだ……って、ええっ!!
わたしの漫画が今年の代表作??
先輩方、本気!?
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