7ページ目.彼女、お描きします

 家に帰ったら、いつもすぐにお絵描きに取り掛かるんだけど、わたしは出会ってから猛スピードで連絡先を交換するまでの仲になった阿舞野あぶの先輩の電話番号をじーっと眺めていた。


 それにしても素敵な先輩だったな。


 スタイル良くてオシャレで可愛くて。


 鬱陶しい前髪で視線を隠すわたしとは正反対。


 そんな先輩がわたしに絵を教えてって連絡先を交換しようなんて……。


 たとえ一緒にいたとしても住む世界が違い過ぎて、教えられないよ。


 それに話が合うかどうかもわからない。


 でもあの先輩、どっかで見たことあるような気がするんだけど……。


 気のせいかな。


 確かに先輩は綺麗な人だけど、似てる人が世の中にいない唯一無二の外見というわけではない。


 せっかくだから、わたしの漫画にもあんな綺麗な女の子登場させようかな。


 そう思い立ったわたしは、紙とペンを用意してさっそく阿舞野先輩を絵にしてみることにした。


 髪は黒系でパーマの当てた髪をポニーテールにして、腕にはゴールドのバングルつけて……。


 目はぱっちり大きくて、少し吊り目で……。


 でもきつい顔じゃなくてキュートさがあって……。


 わたしは記憶の中の先輩を二次元に変えてゆく。


 でも、描いてはみたものの、どうも顔が先輩っぽくない。


 記憶の中の先輩の顔は鮮明なのに、絵にすると、わたしの技術がまだ未熟なせいか、本人と何か違う。


 もっと先輩に近づけようと、わたしは参考になる顔はないかなとネットを漁り始めた。


 ギャル、ポニテ、パーマ、女子高生、と先輩に関わるワードを検索していく。


 するとそのうち先輩そっくりな顔の人がスマホの画面に現れた。


 わたしは心の中で「これだ!」って叫んだ。


 だってあまりに先輩にそっくりなんだもの。


 その人は人気JKライバー、うーめろさん。


 群光学園ライバー部所属。


 読モも務めてて、いま同年代に人気上昇中。


 えっ、群光学園??


 って、もしかしてこれは先輩本人!?


 そうか、先輩のこと、どっかで見たことあると思ったら、美容院で暇つぶしに読んでた雑誌に載ってたモデルさんだ!


 これは驚き……。


 わたしなんかが、こんな有名人と急にお近づきになるなんて……。


 わたしは自室で一人、恐縮してしまった。

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