2-2 リゾートの午睡

「わあ、素敵」


 案内されたリゾートの居室。マリーリ王女が窓のカーテンを引くと、南国の陽光に輝く海が広がった。手前には真っ白なビーチ。


「きれい……」


 立ち並ぶホテルのうち中クラスを選び、一番いい部屋を押さえた。孤児暮らしだった俺の過去からすると、これでも天国の部屋だ。


「王族からしたら、こんなん安宿も同然だろ」

「いいえ」


 首を振っている。


「王女なんて、王宮で飼い殺しの猫も同然。外の世界を知らないのですから。毎日毎日、辛気臭い部屋の壁を見つめるばかりで」


 入り口に立つ俺の元に駆け戻ってくると、腕を胸に抱く。


「エヴァンス様に無理を言って、連れ出していただけて幸せですわ、わたくし」

「それなら良かった。喜んでもらえて」

「これからどうするの、エヴァンスくん」


 馬車から持ち込んだ大量の荷物を、アンリエッタはてきぱきと分類。次々にキャビネットに収めている。服が多いのは、やはりふたりが女子だからだろう。


「初日は一番、気分が高揚するからな。それを大事にしたい。少し休んだら、水着を買いに出よう。誂えだから仕上がるのは明日以降だろう。けどその場で持ち帰れる品もあるはずだからな。それを着て、そのままこのリゾートのプライベートビーチでまったりだ」

「わーいっ!」


 隠れていた俺の胸から飛び出してくると、ピピンが部屋を飛び回った。


「ねえねえエヴァンス。ボクの水着も忘れないでよね、ねえねえ」

「わかってるって。……ふわあ」

「エヴァンスくん、横になったほうがいいわよ。みんな気が急いてたから、随分馬車、飛ばしてきたし」

「そうだな。……少し昼寝しよう。みんなも寝るといいよ」

「はい」

「ええ」


 キングサイズのどでかい寝台に横になると、両脇に姫とアンリエッタがくっついてきた。


「なんだか……わくわくします。これから毎日、この寝台でエヴァンス様と眠れると思うと」

「なら予行演習だな。ほらおいで、マリーリ王女」

「はい」


 抱き寄せてやると、嬉しそうにくっついてくる。腕枕で、俺の体に腕を回してきて。


「姫様……」

「アンリエッタお姉様……」


 俺の胸の上で、ふたりは手を取り合った。その上に、ピピンが舞い降りる。


「これからもわたくしをお導き下さいね」

「もったいない。姫様はわたくしやエヴァンスくんより、ずっと立場が上ですよ。……いずれこの国の女王になるのですから」

「いえ……わたくしがなるのは、エヴァンス様の連れ合いですわ。……アンリエッタお姉様と同じで」


 くすくす笑っている。


「エヴァンス様……。キス……して下さい。いつものように」

「姫……」


 頭にそって手を添えると、寄せて唇を奪う。もうすっかりキスが日課になっちゃったな。まあいずれ結婚するんだからいいんだろう。父王にはこんなとこ見せられないけどさ。


「……ん」

「エヴァンスくん。わたくしも」

「アンリエッタ……」


 ふたり交互に唇を与える。それからふたりを抱き寄せた。


「少し寝よう」

「はい……」

「エヴァンスくん……」


 ふたりの体を感じる。マリーリ王女は十三歳だが、年齢の割に発育はいい。胸だけでなく背中も尻も柔らかく、もうすっかり女と言っていい。


 俺、ちょっと前までただの孤児だったのに、今はこうして、かわいい女の子をふたり抱いて、南国リゾートのホテルでうたた寝してる。しかも固有ダンジョンに飛べば、あっちはあっちで女の子がいっぱい俺を待ってるし。……こんなことあっていいのかな。


 夢なら醒めないでくれ……と願いながら、心地良い午睡に落ちていった。

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