第282話 このクラスでは稀によくあること
今から学校が始まるという時に自分の世界に入っていってしまった蒼唯。こうなると中々現実に戻ってきてはくれないのを理解している輝夜とまっくよ。
「こうなった蒼唯を戻すのは難しいよ。さっきからずっと、ですです言ってるし」
「まく~…まくまく!」
「え、なんか凄く名案を思い付いたみたいな表情してるけど、絶対迷案でしょそれ」
まっくよが自信満々に語る案に輝夜は頭を抱えるが、まっくよが謎にやる気を見せたことから、まっくよが蒼唯の代わりに授業を受けるという苦肉の策を敢行することとなるのであった。
「じゃあこの問題を…」
「まく~!」
「あ、なら、まっくよさん! 何番が正解かしら?」
「まく…まく~!」
「正解よ。レム睡眠時に見られる身体の状態として正しいのは、3番の急速眼球運動よ。まっくよさんには簡単だったかしら?」
「まくまく~」
「えぇ…」
輝夜の予想を裏切るようなまっくよのファインプレーもあり午前中を何とか乗り越えることが出来た。
しかし問題は昼休みに発生する。
そしてその問題の一番の被害者は、昼休み明け5時限目の授業担当の教師であった。
その教師が教室に入った瞬間、目にした光景は、クラスの生徒全員が可愛いとしか形容できない、デフォルメされた姿に変わり果てていたのである。
よくよく見れば生徒たちだけではなく、生徒たちが座る椅子や机、教卓や黒板に至るまで可愛くデフォルメされているのだが、そもそも目の前の光景が受け入れられない教師はその事には気が付かない。
「お、おい、齋藤! は駄目か…えぇっと神楽坂! 神楽坂はどこだ?」
教師は狼狽し、学校での蒼唯担当である輝夜を探す。
全員デフォルメされているので、一瞬誰がどこにいるのか分からなくなる。とは言えそこは蒼唯クオリティ、ちゃんと見れば個人の識別は容易であった。
「先生、蒼唯関連で困ったら私に振ってくるのやめて下さい」
「仕方ないだろ! なんだこれは? 状況がわからんぞ!」
「さっき蒼唯がこれぞ『もふもふ
「わからん状況にわからん単語を混ぜて説明するな!」
説明は誰もが分かるような簡単な単語を使って分かりやすくとはよく言われるが、蒼唯と共にいると、説明になってない説明しか出来ない場合が多いのだ。
「と、取り合えずこの状況を何とかしてくれ!」
「それ、蒼唯にってはぁ…まっくよ?」
「
「蒼唯、朝からずっと制作モードだから疲れて眠そうだね。さっきも一人言でちょい眠いですって言ってたし」
「
デフォルメされた教室と生徒、錯乱しているため自身もデフォルメされ可愛くなっている事に気が付かない教師では授業にならない。
とは言え完全に自分の世界にいる蒼唯に制作途中の『もふもふ
「ふう、コンセプトが『可愛いは傷付かない』で良かったよ。敵側と同じで無視する系だったら止まらなかったし」
「まく~?」
「ありがとう、まっくよ」
とは言え錯乱教師が正気に戻る頃には5時限目は終了の時刻となっていたので、結局授業にはならなかったのであった。
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