第281話 難航する製作

 次の日学校では、蒼唯から世間話でもするように聞かされた、衝撃の存在に対して驚きを隠せない輝夜の姿が見られた。


「スキルを無視するモンスター!?」

「です。まあ昨日現れたのは、まっくよたちの餌になったですけど」

「まく~」

「スキルが通じないのに倒せたんだ。流石はまっくよたち。でも、私たちじゃ厳しそうな相手ってことだよね」

「輝夜たちのスキルをしっかり解析したことね~ですから知らんです。例に出すと私の『真理の眼』は通じなかったですね」

「それじゃ難しそうだね」


 蒼唯が、スキルという点においては間違いなく、その他大勢に対して周回差を付けて独走していると確信を持っている輝夜は、蒼唯が常用しているスキルでも通じなかったとの情報から、そう判断する。

 攻撃でも防御でもスキルが通用しない敵。蒼唯の予想ではまだ本格投入はされないらしいが、既にぬいとまっくよの元には出現している事を考えれば、その予想を鵜呑みにして悠長にはしていられない。


「取り敢えず、星蘭さんとかに話して他のギルドとかに注意喚起して貰わなきゃ」

「あぁ、頼むです。私はそれ自体を対策するアイテムを造ろうかなって思ってたですけど、中々に難航してるですから」

「了解。それにしても珍しいね。蒼唯がアイテム造りで苦戦するの。まあそんなトンデモモンスター相手にだとめちゃくちゃ難しそうなのは予想付くけど」


 『可愛いは傷付かない』をテーマにして製作を開始した蒼唯であったが、彼女にしては珍しく製作は難航する事となった。

 当初の予定では昨日の内にさっさと造り、こはくに手渡すつもりであったのだが、とある地点で躓いてしまい、それを解決すべく、うんうんと唸っていたところ強制睡眠時間になってしまい、睡眠警察に捕まりあっという間に爆睡。現在に至るのであった。


 そのため学校に登校してきても製作の事で頭を悩ます蒼唯。

 製作難度が高いモノこそ、口では大変ですと言いつつ楽しそうに造るのが蒼唯であるので、翌日に引き摺る程悩む彼女は幼馴染みの輝夜から見てもレアであった。


「そうなんです。今回のは特に難問です。世界には私の想定を越える可愛いがあるかもしれんですけど、今の設定のままだとそれは傷付いちゃうです…」

「あ、そっちなんだ」


 輝夜はてっきり『傷付かない』の部分が難航していると思っていたが、そんな部分はとっくにクリアし『可愛い』の基準に対して頭を悩ませていた蒼唯。


「やっぱりです。色んな要素を詰め込む必要があるですね。そうなると素材とかから選ばないとです? 結構時間が掛かりそうです」

「皆可愛い判定にしない辺り蒼唯って言うか、可愛いにシビアだよね…」

「皆を可愛く…なるほどです。『もふもふドリーム』の機構を応用すればです…相手はスキルを無視する関係で、もふもふに成れんですし」

「蒼唯?」

「良いアイディアです。輝夜のお陰で良い作品が出来そうです!」

「あ、そうなんだ。それは良かった。取り敢えず今から授業だから切り替え…あぁ完全に製作モード入っちゃったよ」


 しかし輝夜の発言により新たな道を思い付いた蒼唯は、完全に自分の世界へと入ってしまうのであった。

 



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