第271話 海中へ向けて
可愛らしい装飾が施された靴を履いた蒼唯が、学校のプールに手を翳すとプールの水が真っ二つに割れた。その様子を見た輝夜、そして見学に来ていた新入生たちは絶句していた。
そんな観客の心情など知る由もない蒼唯は無邪気に振り返りやれやれと肩を竦める。彼女的にこの結果はお気に召さなかったようだ。
「って感じです」
「えーと、これは川とか海でも同様に?」
「まあそうです。ただ前『
「えぇ…いつも蒼唯が造る概念装備ってそういう問題はなんか良い感じに有耶無耶なのに?」
『
とは言えこれまでは、不思議なほど、そういった被害が実際に起こることは殆ど無かった。なのに今回に限っては蒼唯自ら注意してきたのである。
「なんかこれ作ってる時に『実録! 海に生きる男たち』ってテレビ番組をぬいたちが見てたですよ」
「うん」
「なんかその番組でやたらと漁師さんたちが海は危険なんだみたいな事を言ってたです」
「えーと、そのイメージが概念装備の効果にも現れちゃったかもってこと?」
「多分です」
「何で蒼唯も分かってないの…」
「実際に海とか川で使ってみれば分かるですけど、下手すると未曾有の大災害になるかもです」
「じゃあ駄目だよ! 却下!」
日傘を差していると言うことは晴れているというイメージが『
そのためテレビ番組の影響で、海を割ると何か波とか起きそうですなんてぼやーと考えた蒼唯のイメージが混入した『
「まあこれは失敗作だから良いです。次はーです」
既に新入生の大半を置き去りにしていることに気が付いていない蒼唯は、『
「です。輝夜って『水呼吸』付きの装備って持ってないですよね?」
「な、ないかな。まあ私は蒼唯がくれた『呼吸不要』の指輪があるから別に必要ないけど」
「そうだったです? まあそれは置いとくです。坪さんとかにも聞いたときは、『水呼吸』が付与された装備って珍しいって言ってたですのに?」
「珍しいと思うよ。今回の『海中の神殿』を含めても水辺のダンジョンはかなり少ないから」
ダンジョンが水中にあるという事が無く、探索者も水中で呼吸したいと思う場面が無いため『水呼吸』等のスキルが付与された装備の数は少ない。
輝夜が『水呼吸』の上位版のような『呼吸不要』の指輪を持っているのは単に、毒ガスが充満したダンジョンを攻略すると聞いた蒼唯が心配して渡したに過ぎない。
「まあでも、この指輪のお陰で『海中の神殿』に行っても呼吸の心配はしなくて良いね」
「でもです!」
「え、うん?」
「呼吸できるようになっても水の中だと動き難いと思うです」
「まあそうかも」
蒼唯的に『呼吸不要』の指輪は邪魔何だろうと輝夜は悟る。
そして直ぐに後悔する
「そこでです。水の中での呼吸と泳ぎを組み合わせたのがこれです。『ちょっと
「うん、ちょっと待って」
「前に見せた『
「その気遣いは、え、ダンジョンで人魚姫になれって言ってる?」
「輝夜の考えてることは分かってるです。私も探索者の考えは理解できるようになってきたです。見た目は変わるですけど、防御力は…」
「いや、そうじゃなくて!」
探索者について多少詳しくなった蒼唯と言えど、ダンジョン内部で突如、某日朝アニメよろしくな変身アイテムを使い人魚姫に変身することへの戸惑いを理解する程の成長はしていないのであった。
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