第251話 本物であるが本人ではない
突如として現れた蒼唯を見て一瞬思考が停止するリリス。しかしこれまでの経験、蒼唯たちに振り回されれ続けた事により得た
再起動した頭をフル回転させたリリスは、目の前の蒼唯は本物であると判断する。
旧『狂気の研究所』のマスターであるグリシアのように、蒼唯に侵食されただけの紛い物という可能性は、蒼唯の存在に気が付いたぬいたちの様子を見てかなぐり捨てる。
【『
だからといって、この目の前にいる蒼唯がリリスたちが知る蒼唯本人なのかと言えば勿論違う。
この世界にいる、リリスたちの主人である蒼唯は、この蒼唯のように冷酷な目を向けてこない。
そして何よりも、先程彼女はこの空間を自身の庭だと称した。この世界の蒼唯曰く可愛くない『ホムンクルス』たちが犇めくこの空間を。
【あり得ません! ですよねぬい様、まっくよ様】
「ぬ、ぬい…」
「まくま…」
可愛くないものを大量生産。蒼唯が一番嫌がる事である。それだけでこの蒼唯が決定的にナニか違う事が分かる。しかしそんなリリスの発言を聞いたぬいたちの反応は鈍い。
魂で蒼唯と繋がれるぬいたちは、違和感を感じたとしても魂で判断した結果を破棄することを躊躇う気持ちも分からなくはない。
しかしそれは蒼唯と相対している場合、致命的な隙となる。
【…魔族がもふもふですか。ヘドが出るです、ね!】
【ぐっ! これは、『悪魔化』した蒼唯様も使っていた『
【残念、『
【なるほど! ならばこの切れ味もなっと――】
【少し、黙れです】
一瞬にしてリリスを拘束した『
「ぬいぬ!」
「まくま~」
これによりリリスの『
【大丈夫ですぬい様、まっくよ様! お二方は一旦蒼唯様の元へ帰還し判断を――】
その隙を付き、未だに反応が鈍いぬいたちに指示を出すリリス。
そんなリリスに再度、不可視の糸が迫る。しかし不意打ちであった先程とは異なり、十分警戒していた今回は何とか回避することができた。
それを見て更に苛立った様子を見せる蒼唯。
【黙れって言ったのが聞こえなかったです?】
【…貴方に、いえ、貴方の言うことを聞く必要があるとも思いませんね、蒼唯様?】
そんな蒼唯を警戒しつつ、目でぬいたちに合図をするリリス。
流石に躊躇なくリリスを切り刻む様子を目の当たりにし、この蒼唯が、自分たちの敵であると言う事実を受け入れたぬいたちは、リリスの指示通り撤退するのであった。
ぬいたちの撤退を阻止する素振りを一瞬見せた蒼唯は、それを止めリリスに向き直る。
【やけにあっさりと。やはりぬい様方とは戦いたくありませんか?】
【お前こそ、ぬいたちと一緒じゃなくて良いです?】
【ええ、今の蒼唯様であれば私1人で時間稼ぎくらいは可能ですので】
今必要なのは情報収集であると判断し1人で残ることを決めたリリス。
そうであっても、ぬいたちがいる方が成功率は高いようにも思える。しかし蒼唯の『錬金術』での対応力は凄まじい。特にぬいたちのようによく知った者相手であれば、睡眠の無効化や茸の殺菌等はお手の物だろう。
ならば敵意剥き出しにされているリリスの方がまだマシであろう。
【それに、戦闘力などは兎も角、不死性能だけならばぬい様方よりも私の方が優れておりますので】
【こっちのわたしが造った復活装置ですか】
【ええ】
既に1つ減らされているが、残機の数なら自信のあるリリス。
しかしその自信を嘲笑うように蒼唯は言葉を続けた。
【わたしが造ったモノを頼りに私とたたかうです?】
【何か問題でもありますでしょうか?】
【私がお前を弄ればお前は――】
【可愛いを捨てた蒼唯様が、蒼唯様の可愛いを詰め込んだ私を…弄る? 冗談でしょう】
そんな蒼唯を逆に嘲笑うリリス。
先程の攻防を考えるにリリスが、目の前の蒼唯に勝てるとは微塵も思えない。しかし普段の蒼唯を相手にしている時の絶対に抗えない絶望感も微塵も感じないのであった。
【…もう、いいです。もう本当に、喋るなです!】
【だから、貴方の言うことを聞く必要などどこにもありません!】
☆☆☆☆☆
いつからだろう。
リリスの方が蒼唯よりも主人公然とし出したのは
最初からかなぁ?
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