第250話 本拠地へ
ぬいたちが倒してきた『ホムンクルス』を『錬金術』を用いて解析していた蒼唯であったが、急に解析していた手を止め唸り出す。
「むむむです」
「ぬい? ぬいぬい!」
「上手くいかなくて唸っている訳じゃないです。どちらかと言えば解析が順調すぎて戸惑ってる感じです」
「まく~?」
順調に越したことはないと思うのだが、蒼唯には何かが引っ掛かるのか、解析しては手を止めを繰り返すのであった。
『ホムンクルス』の解析は大事である。大事であるが、リリスとしは、蒼唯が悩みつつも解析を進める姿にこそ違和感を覚える。
今回の作戦の目的は敵の目的を知ることであった。人類にとって有害なダンジョンを滅ぼして回ったぬいたちを止めに来たと言うことは、敵側の思惑とぬいたちの行動はそぐわない点が有ることが分かる。
更に言えば今回の作戦は本来の想定以上に成功していた。
【それで、逃がした『ホムンクルス』に付けたの『猫胞子』ですか?】
「まくま~!」
【そうですね。普通の者たちは『のこちゃん』に気が付きませんが、『ホムンクルス』を造るくらいには魂に精通している相手と考えますと『猫胞子』の方が良いでしょうね】
「ぬいぬい!」
【確認済みですか。流石です】
逃げられたのではなく、意図的に『ホムンクルス』を逃がし、『ホムンクルス』たちの本拠地を暴く。
途中で看破された場合や逃がした『ホムンクルス』が本拠地に戻らない場合なども考えられたが、それらも含めて成功したのである。
となれば後は、いつも通り『ホムンクルス』の本拠地に乗り込み暴れ回ったら終了だろう。と慎重派なリリスでさえも思っているのだが、当の蒼唯はそれらの報告を聞いてもまだ『ホムンクルス』を解析していたウンウンと唸っていた。
【蒼唯様? ぬい様とまっくよ様が『ホムンクルス』の本拠地に向かわれるとの事ですが】
「そうですか…やっぱり可愛くないです」
【蒼唯様…】
ここまで来て、敵の製作物にも可愛さを求めるのかと呆れたリリス。そんな彼女の視線を受け、ようやく上の空から帰ってきた蒼唯。
「ってもう出発するです?」
「ぬいぬい」
「まくま~」
「うーんです。リリス、一応ぬいたちに付いていってくれです」
【私がですか? 別に構いませんが、正直に言って私が付いていったとしても戦力的に足しにはなりませんが】
「念のためです。取り敢えずよろしく頼むです。ぬいとまっくよも頼んだです」
「ぬい」
「…まく」
蒼唯の一声でリリスの参戦が決定する。ぬいとまっくよは基本的に蒼唯の決定には喜んで従うのだが、2匹が余裕を持って撃破してきた『ホムンクルス』の本拠地に乗り込むだけで過剰に心配されると、プライドが少し傷ついてしまう。
そのためぬいたちにしては、控えめな返事を吠えながら出発して行く。
そんなぬいたちを見送った蒼唯は三度解析に戻るのであった。
「何で可愛くないです?」
―――――――――――――――――
逃がした『ホムンクルス』から生えたぬいたちを待ち受けていたのは、同型の『ホムンクルス』たちであった。
【私のダンジョンを滅ぼした『ホムンクルス』がこんなに…】
「ぬいぬ!」
「まくま~!」
【そして、そんな『ホムンクルス』たちをこうもあっさり…】
量も質も普段攻略しているどのダンジョンよりも高い。しかしそんな事は、八つ当たり気味なぬいたちには関係のない事である。
ぬいたちに気が付いた『ホムンクルス』たちが我先にと襲い掛かってくるが、眠るか生やされるかの二択を選ぶことしか出来ない。
そんな2匹の蹂躙を後ろから見ているリリス。
【やっぱり私が付いてくる必要はありませんでしたね】
リリスがそんな事を思っていると、後方から突然人の気配を感じる。
慌てて後方を振り返ったリリスは、思わぬ光景に絶句してしまう。
【やれやれです。ぬいもまっくよも、相変わらずです。人の庭を好き勝手荒らすなです】
何故なら、ここに入る筈の無い人物がそこに立っていたからである。
【蒼唯…さ、ま?】
リリスの瞳に写る蒼唯は、彼女がよく知る蒼唯よりも背伸び、少し顔つきが大人びて見えた。
しかしリリスの本能が、魔族としての直感が蒼唯本人だと叫んでいた。
そんな混乱の真っ只中にいるリリスに、蒼唯は冷酷な視線を浴びせながら言い放つのだった。
【うん? お前は…あぁ、確か『
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