第249話 ダンジョン消失バグ、いや仕様です
ダンジョン攻略と言うのは本来、時間が掛かるものである。モンスターや罠などの障害に邪魔をされつつ全貌が分からない迷路を解くのだから当然と言えば当然である。
それなのに、ぬいやまっくよが爆走でダンジョンを踏破できる理由は、モンスター等の障害が障害足り得ない事に加え、『食トレ』の副次的な効果が大きい。
『食トレ』は食べたら自身の成長に繋がりそうなモノを視覚的、嗅覚的に捉えることが可能となっている。そしてダンジョン内で一番美味しそうに感じるモノと言えば殆どの場合、ダンジョン核であり、ダンジョンマスターである。
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そのため、美味しそうな匂いのする方に向かって歩いていると、気が付けばダンジョンを踏破しているということも少なくない。
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そのため、余計にまっくよたちは驚くことになる。
突然入り口の方向からダンジョン核よりも遥かに美味しそうな匂いが薫ってきたことに。
――――――――――――――――――
今週だけで少なくとも十数個のダンジョンが消失しているという異常事態は、世界中を混乱の渦に巻き込む。
『吉夢の国』や『転職の神殿』などを襲撃した犯人たちの仕業だと考える者、去年のクリスマスに発生した同時多発的なダンジョン災害に関連するのではと考える者など様々な意見が飛び交う中、可愛らしい襲撃犯の目撃情報が出回る。
そのためか、家で作業をしていた蒼唯の元に柊からメッセージが送られてきた。
柊:「そもそも、数日でダンジョンを複数個後略できる奴なんか限られてるからな。皆薄々勘づいてたとは思うぜ」
蒼唯:「まあ、それは想定内ですけど」
柊:「現時点では、ぬいたちが消失させたダンジョンが探索者内でも評判の悪い悪徳ダンジョンばかりってことで大事にはなってないが、騒ぎ出してる輩もいるぜ?」
蒼唯:「騒ぎです?」
柊:「探索者や一般人が巻き込まれた『吉夢の国』や『転職の神殿』のテロもアオっちたちの仕業じゃねーかってね」
蒼唯:「そうなんですか」
柊の言葉に特に驚く様子を見せない蒼唯。彼女としても、そういう考えに至る人間がいるだろう事は想定していた。
ただ柊含め、蒼唯の生態を知る近しい者たちは蒼唯たちがそんな面倒な事を態々しない事とぬいたちを目立たせてまでダンジョン食べ歩きツアーを行っているのであれば何らかの意図があるだろう事を理解してくれると確信していた。
蒼唯:「まあ私たちは大丈夫です。『ブルーアルケミスト』とかにまで中傷が及ぶなら申し訳ないですが」
柊:「そこら辺は上手くやっとくぜ。星蘭とかも言ってたが、基本的にダンジョン関連に無興味なアオっちが自発的にダンジョンに関わってる時の判断は信頼できるからな」
蒼唯:「そうです? よく分からんですけど」
柊:「ただやり過ぎないようにだけは注意してくれ。世界中のダンジョンが消失したら探索者みんな失業しちゃうからな」
蒼唯:「無くなったら造れば良いですよ」
柊:「それ言えるのアオっちだけだからな……頼むぜ」
こうして、現時点での世間の反応を確認できた蒼唯。
リリスに選んでもらい、旧『エデンの園』や旧『転職の神殿』のように探索者を騙してリソースを奪い取るような悪徳ダンジョンを中心に滅ぼしていたとは言え、ダンジョンは資源であり探索者たちの職場でもある。
職場環境最悪なブラック企業であろうと、倒産させたとなれば派遣していた探索者たちからの反感はあると思っていたが、今のところは大事には至っていないようであった。
そして、柊とのメッセージのやり取りを終えたタイミングを見計らったかのようにリリスが飛び込んできた。
【ぬい様とまっくよ様がダンジョン内で3人の『ホムンクルス』と接触、1人を撃破、1人を
「3人…もう1人はです?」
【逃がしたようです】
「逃げられたんじゃなくて逃がしたでいいです?」
【そのようです】
「なら倒したのと眠らせたのを連れて一旦戻ってくるように伝えて――」
「
「
「伝える必要もねーですね。よくやったです」
こうして、14のダンジョンマスターとダンジョンという犠牲を出したが、作戦は無事終了するのであった。
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