第248話 ダンジョンマスターを卒業して
彼は、ダンジョンマスターとしてこの世界に召喚されてすぐの頃に、元の世界で上司であった先輩ダンジョンマスターに『
最初はお得意の冗談だと笑い飛ばしていた彼だが、彼の所属していた軍のトップであるサタンや、サタン様と肩を並べる大幹部であった『
それでもどこか、舐めてた部分があったのだろう。ダンジョンマスターの不死性に酔いしれてる部分があったのかもしれない。
そんな彼の甘い考えは、圧倒的な数の茸と抗えない睡魔によって吹き飛ばされた。
【…ここは】
『ぬいぐるみ』の片割れに熟睡させられた彼が目を覚ますと、そこはどこか見覚えのある草原であった。
そして目を覚ました彼を、どこか見覚えのある蛇が見下ろしていた。
【うん? 目が覚めたか。ならばさっさと働け】
【えーと……って貴方様は、サタン様!】
偉そうな蛇だなと思ったのも束の間、彼は、直ぐに偉そうな蛇の正体に気がつく。
彼からしたら雲の上の存在であったサタン。それが目の前で喋っている光景は、寝起きには刺激が強すぎたのか、彼は思わず絶句してしまう。
しかしサタン登場など問題にならない程の衝撃的事実がサタンの口から語られる。
【ふむ、貴様はどこまで自分の状況を理解している】
【状況でございますか?】
【
【ちょ、ちょっと待って下さい! 核を喰われた!?】
【はぁー、そこからか。送ってくるのは良いとして、最低限の説明はしてから送ってきて欲しいものだ】
彼の理解が追い付かないという反応に飽き飽きとした様子のサタン。
数日前からこんな状態の元部下たちがどんどんと送られてくるので、その度に説明をしなくてはならないためだ。
【おい、貴様】
【は、はい!】
【貴様が理解していれば良いのは、ダンジョン核を失いダンジョンマスターとしては死んだが、魂は保護されここ『エデンの園』に送られてきた事。それから、これから『エデンの園』の1モンスターとして働く事だけだ】
【死ん、ですが!】
サタンの口から語られた事実を何一つ受け入れられない彼。
しかしそんな狼狽する彼を虫を見るような冷たい視線で見下すサタン。
【口答えをするのか? 貴様ごときが我に?】
【い、いえ!】
【ふん! だったらいつまでも間抜け面を晒していないでさっさと働け。やることは…そこにいる『天邪鬼』にでも聞け】
【ぎょ、御意!】
核を失ったのにどうして自分は生きているのか等、分からないことが多すぎるため困惑しっぱなしの彼であるが、そういった疑問にサタンは答えてはくれないと悟ったのか、言われた通り『天邪鬼』の元に駆けていく。
そうして慌てた様子で駆けていく彼を見守るサタンの視線は、先程の冷たい視線とは打って変わって優しいものである。
【ダンジョン核とマスターにある繋がりを切り離して、マスターの魂を新たな器に定着させるか。そんな前人未到な所業の立役者が茸…『のこちゃん』とはな。相も変わらず意味が分からん】
ダンジョン核とダンジョンマスターが繋がっている部分を『のこちゃん』が侵食する。これにより核が崩壊してもマスターは崩壊しない。
別に核を茸ハッキングすれば同じ事は出来るのだが、リリスが見定めた悪徳ダンジョンマスターたちを野放しには出来ないため、サタンと同じように茸による
であれば最初から『のこちゃん』をマスターの魂に生やした方が早いというのが、蒼唯たちの判断であった。
【それにこの説明をするということは、貴様たちはダンジョンマスターから『のこちゃん』になったぞなんて訳の分からない説明をしなくてはならなくなるからな……流石にそれは酷だろう】
サタンは自分の頭の上に生える茸を尻尾で触りながら、そんなことを呟くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます