第247話 これは攻略ではない
ぬいたちはダンジョン食べ歩きのプロである。
『迷宮喰い(少食)』というスキルを引っ提げてこれまでも様々なダンジョンを喰らってきた。しかし、今回は食べ歩きをすることがメインではない。
重要なのは確実にダンジョン核を食べる事によるダンジョンの消失である。そのため、片っ端からダンジョンを食べるといういつものスタイルでは、肝心のダンジョン核にたどり着く前にお腹が一杯になってしまうことだろう。
【まあ厳密にはダンジョン核を破壊すれば良いので、食べる必要は無いのですが】
「ぬいぬ!」
【分かっております。ぬい様方が食べる事に反対している訳ではありません】
「そうです。リリスは攻略中にダンジョンを摘まみ食いして、核を食べられなくなったら勿体ないって注意してくれてるです」
「まくま~」
【…そこまでダンジョン喰いに肯定的でもありませんが、いえ何でもございません】
ダンジョンマスターでもあるリリスとしては、ダンジョン消失と言う結果は変わらないとは言え、ダンジョン喰いに関しては中々肯定しがたい気持ちを抱えているのであった。
「あと、この前の合宿で造った『食トレ』促進用の胃薬は鞄に入れてるですけど、迷宮に関しては少食なんですから食べすぎるなです」
「ぬいぬい!」
「まくまく~」
今回の作戦を行う上で『迷宮喰い(少食)』の少食設定は正直足枷なのであるが、この作戦以後、この設定が無くなったぬいたちを想像し、震え上がってしまったリリスの説得によりそのままとなっている。
そのため、いつものように階層ごとの味の違いを楽しみながら進むダンジョン食べ歩きツアーをしている余裕はない。
とは言えやっぱりダンジョンで一番美味しい部分は、いつもはお預けを食らっている核であるので、特に残念がる様子は見せないぬいとまっくよなのであった。
――――――――――――――――――――――
『悪逆の箱庭』のダンジョンマスターである『天邪鬼』は絶望していた。
【流石にこれは…おかしい】
モンスターが探索者に蹂躙される、ギミックが全て突破される。そんなことはよくあることだ。
ここ『悪逆の箱庭』は評判が悪いダンジョンであるため、調査目的で頻繁に高位探索者が訪れるため、そういった蹂躙劇は度々見かける。しかし
【そういった連中は全員、俺様の権能でカモにしてきていたのに…なんだこれ】
差し向けたモンスターたちは全て眠らされ、ダンジョンの3分の1は既に茸に侵食されていた。
しかも軽快なスキップで絶妙に此方をおちょくってくる歩く茸によって、侵食エリアはどんどんと広まっている。
一言で言えば理不尽であった。
【こんな、こんなダンジョン攻略があってたまるかぁ!!】
『天邪鬼』の台詞は尤もである。尤もであるが、間違っている。
この理不尽な状況を作り出した2匹の『ぬいぐるみ』は、ダンジョンを攻略しに来ているではなくお食事に来ているのだ。
「
「
つまり、目の前に広がる理不尽な光景は、この『ぬいぐるみ』たちにとっては、レストランに来て食事前におしぼりで手を拭く程度のことなのであった。
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