第245話 半壊相次ぐ

 ホムンクルスたちが『吉夢の国』を襲撃した末に『吉夢の国』が消失した前代未聞な事件の話題は、もふもふな家『シルス』によって塗り替えられた。

 『吉夢の国』というテーマダンジョンでなければ甚大な被害が生じていたであろう出来事であったため、珍しくピリついてたネット空間も、すっかり絆されいつもの雰囲気を取り戻したかけていた。


「速報です。先日『吉夢の国』で発生したとされるダンジョン内でのテロ行為が、同時刻、複数のダンジョンで発生したとの事です。詳細は現在調査中ですが、現時点でダンジョンの消失等は発生していない模様です」


 しかし、そんな空気を一気に吹き飛ばす出来事の発生する。

 その中でも衝撃を与えたのは、数あるダンジョンの中でも探索者たちにとってトップクラスの有益度を誇る『転職の神殿』でのホムンクルス襲撃であった。


【『転職の神殿』もそれなりの迎撃システムはありますし、マスターの『堕転司教』クルートもただでは転ばない輩ですが、相手が悪かったようですね】

「今回は人的被害も出てるって話ですね」

【はい。また蒼唯様から貸し出されていた『魔力炉』等のアイテムが軒並み破壊されたとのことです】

「まあ、そんなのは別にどうとでもなるですけど…」


 『転職の神殿』はダンジョンマスターのクルートが蒼唯たちによって理解わからされてから、探索者にとって有益な転職施設へと生まれ変わった。

 しかし、これまで探索者から徴収していた諸々を取らなくなった結果リソース不足になりダンジョン経営が立ち行かなくなると困るため、そのリソースを補うべく色々なアイテムを与えていた蒼唯。


 蒼唯からすればどれも可愛くない大したことの無いアイテムなのだが、受け取った側からすれば希少過ぎる代物である。

 特に『転職の神殿』のマスターであるクルートは、蒼唯の信者であるため余計に気にしてしまうのだろう。


【他にも、『エデンの園』や旧『狂気の研究所』などでも襲撃があったそうです。被害は甚大なようですが、幸い半壊程度で住んでいると両マスターから返事を貰っています。此方も蒼唯様が貸し出されているアイテムは…】

「…やっぱりおかしいですね」

【おかしいですか? 蒼唯様にその自覚は無いとは思いますが、蒼唯様のアイテムはダンジョン運営を行う上での虎の子でして…】


 『迷宮の壊し屋ダンジョンブレーカーズ』のぬいとまっくよによってめちゃくちゃにされ、人類に有益な存在へと生まれ変わらせられたダンジョンの多くに蒼唯のアイテムが配布されている。

 有益なダンジョンというのは、スポンサー蒼唯からの援助によって成り立っている慈善事業みたいなモノである。


 そのため、ダンジョンを襲撃する連中が、資金源である蒼唯作のアイテムを狙うのは至極当然なようにリリスには感じられた。

 しかし蒼唯が引っ掛かったのはそこではない。


「リリスは、ほむんたちの襲撃をルーシィの助力ありでも防げなかったですよね? 現に『吉夢の国』を使い捨てにするくらいには追い込まれたです」

【え、あ、はい】

「他のダンジョンが半壊程度で済んでるのはおかしくないです? それも襲撃された所ほぼ全部です」


 確かに言われてみればとリリスは俯き考え込む。

 蒼唯の言う通り、蒼唯の思考を頭の中で飼っているグリシアなら兎も角、一応リリスと同格なサタンやクルートが蒼唯たちやルーシィといった特異戦力を用いず襲撃を乗り越えたと言うのは信じられない


【…敵側の目的は、ダンジョンを消失させる事ではないと?】

「なんとなくの勘です」

【ですが、そうですね。同時に複数のダンジョンを狙える戦力があるのならば、一つのダンジョンに戦力を集中させれば確実にダンジョンの消滅は…】


 そうして、リリスは一人言を呟きながら思考の世界に潜って行ってしまうのであった。


「リリスがごちゃごちゃ考え出しちゃったです…さて、『魔力炉』ってまだあったですかね」

「ぬいぬ?」

「まく~!?」

「ぬいやまっくよに付けてるのを取り外すくらいなら、新しく造るですから大丈夫です」

「ぬいー」

「心遣いありがとです」

 





☆☆☆☆☆

アイテム説明


人見知り結界ぼっち・ザ・ブロック

人見知りが集団で影を薄める性質(認識阻害)と近づくなオーラ(人避け)という効果を兼ね備えた結界。

効果対象は蒼唯が思う人見知りに準拠する


友人や家族→普通に喋れる、何なら流暢なくらい(効果適用外)

宅配や郵便配達→事務的な会話ならギリ(効果が薄まる)

パパラッチや迷惑なファン→人の事を考えない陽キャめ!(効果が高まる)


なので感想であったような宅配等は住所を見ながらならギリOKな感じとなります。

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