閑話 好奇心を眠らす猫

 それは、まっくよが蒼唯が通う高校でいつも通りお昼寝促進活動に勤しんでいる時であった。

 1クラスまるごとを眠りの世界に誘い終え次の教室に移動しようとし廊下に出たとき、廊下の壁にもたれ掛かりながら友達と駄弁っている生徒たちの会話が聞こえてきた。


「なんかいつにも増して眠そうだなお前。また夜中までゲームか?」

「ふぁ~、まあな。あのゲームシリーズの新作が発売されてよ。もう、寝てる暇なんてねーよ」

「まあ、この学校なら夜寝なくても…」

「な! てか、あんな睡眠特化型の猫を造れるなら、逆に眠らなくてもよくなるアイテムとか造ってくれねーかな」

「まあな…たまに眠るの勿体ないって思うも――ぐぅ…」

まくねろ~」


 当然、この生徒たちは即刻廊下で某眠りの名探偵スタイルで爆睡させたのだが、この会話は眠りを司るまっくよにとっては衝撃的であった。

 

 当然ながらまっくよに眠るのが勿体ない等と思う感情は存在しない。

 しかし考えてみれば、これまで出会ってきた者たちの中にもそのような者たちはいた。

 今、教室で眠っている生徒たちもそうだ。まっくよが提供する極上の眠りの虜になった者も多いが、短期間で十分な睡眠効果を得られることを望んでいる者も少なからずいる。


まくむうぅ~」

「あれ、学校中眠らせて来たんじゃねーです? それにしては不機嫌そうですけど」

「……まくそれ

「私は毎日しっかり寝てるです。それにコレの作業もしたいですし」

まくそう


 考えてみれば、まっくよの飼い主である蒼唯らサブ飼い主のリリスもどちらかと言えば、趣味や仕事に夢中で睡眠を疎かにしがちなタイプだと気付く。

 

 そうなると途端に怖くなるまっくよ。

 今は夜作業に夢中でも、まっくよが一鳴きすれば快く眠ってくれる蒼唯も、先程の生徒たちのように眠るのが勿体ないなどと言い出す未来がもしかしたらあるかもしれないのだ。


「まく~」

「なんです? じーっと見て、私の顔になんか付いてるです?」

まくまなにも


 まっくよは何故眠るのが勿体ないなどと宣う人間がいるのかを調査することに決めるのであった。



 わかったことは、現代にはやりたいこと、やらなくてはいけない事が多すぎると言うことであった。前者は蒼唯、後者はリリスが嵌まりそうな理由である。


「まく? …まくまく!」


 そうした調査から思い付いたまっくよの案は、やりたい、やらなきゃと思う気持ちをまず最初に眠らせば良いのではと言うことであった。


 感情を眠らすと言うと難しそうに思えるが、まっくよは度重なる『食トレ』による成長の大部分を眠らせることに注ぎ込んだ結果、これまで、スキルだけや魂だけを眠らせるなんて荒業を成功させているのだ。

 感情だけを眠らせる事も可能なのだ!


【いや、駄目ですよ。普通に】

まくなに!?」

【そんな驚かれましても】


 そんな作戦を思い付いたまっくよは、他の人たちに試す前にまず、家で忙しそうにしていたリリスで実験した。

 そして感情睡眠を体験したリリスは、自信満々なまっくよにノーを叩きつけた。


【今、感情というか好奇心とかそういった正の感情だけ休止させられました結果、負の感情だけが襲い掛かってきまして内心とんでもなかったのですが…】

まくまほんと?」

【と言うより、眠りたくないって思っている方の感情だけ眠らせるならば、普通に眠らせた方が良いのでは? 現にまっくよ様の眠らせの虜になっている方は多いですから。私や蒼唯様もそうですし】

まくそう? まぁくそっか


 この言葉を受け、睡眠の質を高める練習に励むようになるまっくよ。

 こうしてリリスの活躍により、感情を眠らせて回る化物の誕生は未然に防がれるのであった。






☆☆☆☆☆


こういった閑話は思い付いたら即投稿したい派なんですが、今回みたく本編の間に唐突に閑話をぶちこむのも抵抗があるジレンマ。たまに我慢できずに投稿しちゃうけど


1 これまで通り本編の合間合間にぶちこむ

2 章立てして閑話とかだけまとめる

3 SS置き場みたいなのを新たに作ってそっちに投稿

4 近況ノートとかに投稿


かな

皆様が気にしないならこれまで通りかなと思ってますが



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