ダンジョン消失編
第238話 簡易ダンジョン
ここから少しシリアス展開が続きそうな気がする
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『吉夢の国』の消滅。言葉にするのは簡単であるが、実際問題として現在の『吉夢の国』を消滅させるのは中々に至難である。
そもそも出現したての段階ですら、まっくよの蹂躙がなければ各国の探索者のトップ層を壊滅させていたダンジョンである。それに蒼唯の力添えが加えられたダンジョンがホイホイと消滅する方がおかしい。
とすれば誤報である可能性も考えられるのだが、そのニュースを見た蒼唯は、これが実際に起こった事であると確信した。
そのため合宿をしている場合では無いと判断した蒼唯は、テキパキと帰宅準備を始めるのであった。
「坪さん、師匠。緊急事態が起きたですから、私は帰宅するです」
「僕たちもニュースは見たよ。リリスから連絡は?」
「無しです。まっくよに確認して貰うのも考えたですけど、リリスが敢えて連絡してこないなら、万全の状態で呼び出す方が良さそうだと思ったです」
「うん、そうだね」
「一応、『食トレ』促進用の胃薬とかの必要そうなモノはさっき用意したですから、私抜きでも合宿は出来ると思うです」
「こっちは気にしなくてもいいんだよ」
「そうね。沙羅ちゃんたちには悪いけど、こんな事態だもの。合宿を中止にすることも――」
リリスの緊急事態であるのにも関わらず、合宿の心配もする蒼唯を気遣う坪夫妻であったが、その言葉を蒼唯自身が遮る。
「勘ですけど、合宿は続けた方が良いと思うです。なんだか嫌な予感がするです」
「……なら、そうしようか」
「そうね」
あのリリスが対処できなかった程のイレギュラーが発生していると考えれば、成長できるポイントを逃すのは怖い。しかも今回の合宿は、その後の『天空の城』攻略に繋がっているので尚のことである。
そんな蒼唯の意図を察した坪夫妻は合宿の続行を了承するのであった。
『吉夢の国』消滅のニュースは大々的に報じられている。この状況下で連絡してこないことを考えると、人目につく場所で呼び出すのは良くない。
人目につかなそうな場所に心当たりの無い蒼唯は、そういう場所を自ら造り出すことにした。
「さてと、ここに予め造っておいたダンジョン核をセットすればです、『
「まくまく~」
「簡単にできるですけど、10分もしたら勝手に崩壊するですから急がないといけないです」
『
リリスはこれを見たとき、そもそもダンジョンを使い捨てにしないでくださいと吠えていたが。
そんな『
普段リリスは、『悪魔召喚』の応用で蒼唯たちの家に来ているのだが、これには魔方陣かそれに変わる何かしらの事前準備が必要であるし、召喚魔法としてこれはメジャー過ぎるため痕跡が残りやすく、今回のような場合は使いにくい。
そのため別の方法でリリスを実行する。
「じゃあ、ぬいお願いです」
「ぬい! ぬいぬー!」
別の方法と言っても、馴染みのある方法であり、特に驚くことでもない。
敢えて言うのであれば、"召喚"ではなく"生やす"と言うのが正しいくらいである。
「リリス、状況を話してくれです」
【いえ、あの、唐突に生やしておいて、そちらだけ冷静なのは止めていただけませんか】
ぬいの掛け声に呼応して、地面からにょきっと生えてきたリリスは、瞬時に自身の状況を理解する辺り流石と言えるのであった。
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