第230話 ここ掘れワンワン
蒼唯は自分だけでリリスに『食トレ』合宿の開催を説得するのは難しいと考えた。そのため坪夫妻に連絡を取り、外堀から埋めていきリリスが却下し難い空気を醸し出そうとした。
「最近は、ぬいたちもこはくと遊べてなかったですし。それに、やっぱり『食トレ』合宿ですから料理人は必須です」
「ぬいぬい!」
「まく~」
「師匠の料理をベアーくんやフェフェが食べたら頬っぺたが無くなっちゃうかもです」
またぬいたちは最近色々と忙しくこはくと一緒に遊べていなかったし、そろそろベアーくんやフェフェをこはくに紹介したいと思っていた。それに折角胃もたれを気にせずバグバク食べるのであれば美味しく食べたいという、ぬいたちの強い要望もあって坪夫妻に声を掛けた。
尚、合宿参加予定メンバーの中で唯一、『食トレ』合宿なんてしたらヤバくないかなと思える正常な思考の持ち主の秀樹は、残念なことに家族優先なため、合宿のお誘いを聞いた嫁とペットの反応を見て、その思考を引っ込めるのであった。
そんな連絡をした次の日、秀樹から『食トレ』合宿の場所に関する提案があった。
秀樹:「昨日の合宿に関することなんだけどさ、家族で旅行してて散策してたら、こはくが面白そうなダンジョンを見付けたんだよね」
蒼唯:「新しいダンジョンって事です?」
秀樹:「そうそう。それで、このダンジョン、自力で見つけられない者には認識できない系のギミックが搭載してるっぽいんだよね」
蒼唯:「なるほどです」
何でも、こはくが散歩中にここ掘れワンワンで掘り当てたダンジョンが、探索者界隈で絶賛、注目を集め過ぎ中の参加メンバーたちにとって都合の良いダンジョンであったらしい。
蒼唯はダンジョン自体を造ることはよくあるが、ギミック等細かいことには疎いためよく分からないのだが、ダンジョンに組み込まれた認識阻害は、ダンジョンの入口を見つけた者のみ解除される仕掛けのようである。
名探偵こはくだからこそ発見できたが、一緒に歩いていた秀樹や優梨花は全く気がつかないほど完璧な隠蔽であった。
パーティーメンバー扱いのこはくが発見した結果、坪夫妻の認識阻害も解除され、突然ダンジョンの入口が出現した形となりとても驚いたらしい。
秀樹:「蒼唯やぬいたちは言わずもがな、この前の配信でこはくも少し有名になっちゃったし、目立つ心配の無いダンジョンなら気兼ね無く合宿出来るんじゃないかと思ってさ」
蒼唯:「それは良いかもです! 沙羅たちにも確認してみるです」
秀樹:「まあ、あとリリスにもちゃんと確認しときなよ」
蒼唯:「わかったです」
坪夫妻が揃って発見できないようなダンジョンであれば、ぬいたちやこはく、ベアーくんたちが暴れたとしても後ろから邪魔が入る可能性は低そうである。
であればそのダンジョンで場所は決定しても良いだろうと考えた蒼唯であった。
その後、蒼唯が合宿反対派筆頭(唯一)のリリスに連絡した所、何故だかとても疲れた様子で
【あ、もう蒼唯様の好きなように開催してください】
とあっさり許可が下り拍子抜けする蒼唯であった。
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