第228話 レンタルと合宿

 沙羅とベアーくん、七海とフェフェのコンビたちによって少しずつ攻略が進んでいた『天空の城』であるが、漸くダンジョンの最奥であるボス部屋前まで辿り着いたとの連絡が蒼唯の元に届いた。


 ダンジョン攻略を始めたとの連絡が届いてからそれなりに日数が経過しているように感じる。

 ただこれは日頃蒼唯の身近に、ダンジョン全体をキノコまみれにしたり、モンスターを片っ端から眠らせ、剰えダンジョンすらモグモグしてしまう『ぬいぐるみ』がいるからこその勘違いであり、新規のダンジョンの攻略は数ヶ月単位で時間を掛けるのが普通であるので、攻略人数を考えれば今回のでも尋常ではない程のハイペース攻略と言えた。


「『天空の城』は蒼唯の『魔法の絨毯そらとべじゅうたん』のレンタルが始まって以降、入城できたって人が激増したよね。その後すぐにやられる人も続出したけど」

「レンタル? あぁ、あったですねそんなの。でもすぐにやられたです? 何か前に城に行くまでが大変みたいな話だったじゃないです?」


 ほぼ独占的に『天空の城』を攻略している沙羅たちにイチャモンを付ける者たちもいた。単なる嫉妬心だが、2人と2匹という少人数での攻略なのにそんな事に手間を取らされては堪らなく、対策を講じることとなった。

 それが、沙羅たちが『天空の城』に入城する際に使用し、その様子がSNSで大バズりした『魔法の絨毯そらとべじゅうたん』のレンタルであった。

 柊たちの助言もあり、レンタル料はかなり高額に設定したようで、許可取りのため蒼唯に話が来た事もあった。勿論、沙羅たちにあげたモノをどう使っても沙羅たちの勝手なので、蒼唯はそのレンタル話には関与していないが。


「そもそもの難易度が『天空の城』は高かったぽくて、蒼唯のアイテムで楽しようとする人たちじゃレベルが足りなかったんだと思うよ」

「そんなものです?」

「結果としてそういう人たちは挑戦権も失って、報酬も得られず、それなりに高額なレンタル料払っただけで終わっちゃったからね」

 

 イチャモンを付けてくるような連中に実力がある筈もなく、そんな状況下で『魔法の絨毯そらとべじゅうたん』をレンタルするモノなど『天空の城』に入る資格もない程度の実力しか持たないモノである。

 例外的に純粋な蒼唯ファンでどうしても『魔法の絨毯そらとべじゅうたん』に乗ってみたい変わり者もいたが、ファンたちは一回り飛行し存分に写真撮影したら満足する奇特な方々なので、『天空の城』の攻略者は結局、レンタル前も後もそこまで変化は無かったというオチであった。


「それで、『天空の城』のボス部屋前までこれたって事は近々ボス戦闘するの?」

「これまでの攻略自体が結構ギリギリだったらしいです。だからいきなり沙羅や七海を守りつつ挑むのは不安だってベアーくんとフェフェが言ってるです」

「あ、そっちが言ってるんだ」

「だから、『食トレ』合宿をしたいので協力してくれないかって頼んで来たですよ」

「『食トレ』合宿?」


 『食トレ』でベアーくんとフェフェを鍛える事をメインとした合宿。普通なら直ぐに胃もたれしてしまうため難しいが、メンテナンスが可能な蒼唯の協力有ならその合宿は開催可能である。


「まあ、もうすぐ3月ですから春休みになれば『食トレ』云々は兎も角、合宿の協力くらいはできる時間は取れそうですからね。幸い今は時間があるですし」

「『食トレ』合宿!? それってぬいとまっくよもやるの?」

「それが問題なんです。その話を聞いたぬいたちは大賛成しちゃってるですけど、リリ…別の『ぬいぐるみ』は反対しちゃってるです」

「あ、そうなんだ。『ぬいぐるみ』は皆『食トレ』大好きなイメージだったよ」

「そうでもねーです」


 ただ、もし開催するとなれば、リリスという保護者の許可という関門を突破しなければならないので、未だ開催の目処は立っていないのであった。


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