第227話 昔馴染み

 少し前まで日本以外つまり現地であるアメリカですらまったく宣伝されていなかった『もふもふ楽園パラダイス』であるが、蒼唯が訪れ何やらアイテムを色々と設置したという情報が世界中に拡散された。

 そのタイミングで開催されたプレオープンイベント。突然の開催であり、急遽招待された者たちばかりであったが、辞退者はほとんどいなかった。

 

「その結果がコレか。かなり騒がれているね」

「何か私の想定と違う騒がれ方なのは不服ですけど、まあそういうこともあるです」

「まく~」


 当初は本当に単なるレジャー施設だと考えられていた。『もふもふ楽園パラダイス』の目玉である『もふもふドリーム』も含めて。

 しかし『もふもふドリーム』のもう一つの機能によって可愛らしい外見をした招待客たちは、自身が思い描く最高の自分の感覚を体験することが出来た。

 そして、そんな最高な経験は、彼らの飛躍的な成長に寄与したのであった。


 この話が拡散されたことによって、正式オープンを前に『もふもふ楽園パラダイス』を熱望する声が大きくなっていった。

 それと同時に、特に日本では何故アメリカに建てたのかという疑問が沸き上がっていた。

 もしも蒼唯が一から『もふもふ楽園パラダイス』を建設しそれを運営しろと言われれば、間違いなく造るのも維持するのも比較的楽なダンジョンでの建設となるだろう。そしてそれを計画したとしたらまず間違いなく、リリスが許さないだろう。


「日本に造れば経済効果とかもそうだけど単純に日本の探索者にとって有益だったのにとか言ってる人もいたね」

「そういうのを考えるのは私の仕事じゃねぇーですね。どちらかと言えばリ…探索者協会とかが考えることです。まあ小難しい説明は結羽から聞いたです」


 実際に聞いたのは蒼唯の後ろで控えていた日本探索者協会の黒幕リリスであるが。


「確かにね。というか『もふもふ楽園パラダイス』の黒幕って結羽だったんだね。たま~にお兄さんの名前は聞こえてきてたから元気にしてたのは知ってたけど」

「そうなんです? まあ、元気そうだったです」

「なら良かった」


 蒼唯との昔馴染みと言うことは、輝夜とも昔馴染みな結羽。

 昔から可愛いものしか興味ない蒼唯の作戦参謀のような立ち位置で、蒼唯が考えた無茶苦茶な案を形にするのが上手かった。

 その規模が急激に広まったのには驚いたが、蒼唯以外で『もふもふ楽園パラダイス』という施設を開業させた人物が結羽であることに驚きは他の者よりも少ない。


「まあ蒼唯が気にするとも思えないけど、アメリカに造った件と一緒に活動休止中なのにとか色々いちゃもん付けてくる輩が増えてるから気をつけてね」 

「そういえば休止中だったです。普段よりむしろ造ってるから忘れてたです」

「まくまく~」

「蒼唯らしいなぁ」

「昨日も沙羅たちが来て『天空の城』がもうすぐ攻略できそうだって――」


 結羽が言っていたように蒼唯は造った後の維持についてあまり考えていない。『ぬいぐるみ』のメンテナンス等は別だが、それを受け取ったモノが大切にしてくれればそれで良いという考え方である。

 今回の場合で言えば、結羽という信頼できる友人に渡したため、いつも以上にもう『もふもふ楽園パラダイス』への関心はなく、別の話題に行ってしまうのであった。

 

 

 

 

 

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