第221話 賢インコはやはり賢い

 蒼唯から強引に手渡された『かしこインコ』。何でも『共鳴する魂レゾナンスソウル』を応用する事で、質問者の意図を汲み取って回答する事が可能なのだと熱弁する蒼唯。

 そんな楽しそうな蒼唯の話を聞きながら、リリスは「そもそも過剰性能なモノを応用しないでほしいな」と思うのであった。


 そもそもの話、蒼唯と『賢神』のペアは不味いと感じたリリスの策、それが先に『知識の泉』を攻略してしまい、『賢神』と蒼唯との接点を無くすことであった。こはくが『賢神』と意気投合するという大ハプニングのため、完璧とは言えないが、ぬいたちが直接攻略して『賢神』がサタン化してしまう未来もあり得たのだから最悪ではない。

 しかし、『賢神』には及ばないとはいえ、幾つか質問をしてみた限り、十分過ぎるだけの回答力を持つこのインコが造られてしまった。そうなると、リリスの策の結果は、蒼唯たちが『賢神』の友達の友達となってしまっただけだ。


 ただ唯一の救いは、『賢インコ』は、その性能を高めるために対象者、今回の場合でいえばリリス以外からの質問には応じないよう造られている。そのためこのインコを利用して、ぬいやまっくよが善からぬ知識を蓄える一助にはならない。


「ぬいぬい?」

「シツモンデナケレバ、カイワカノウデス!」

「まくまく~」

「マカセテクダサイ」


 と、リリスが甘い考えをしていると、賢インコとぬいのたちの会話が聞こえてきたので、賢インコは蒼唯家ではない別の場所で厳重に飼うことを心に決めるのであった。


―――――――――――――――――― 


 これまでも世界中で注目を集めていた蒼唯だが、やはり『不老不死』や『死者蘇生』というワードには、パワーがあるようであった。

 これまでも蒼唯を手中に収めようと様々な者が、蒼唯に近づこうと試みた。しかし優秀で可愛いボディーガードや、正体不明であるが、精神支配を得意とする者がゆるゆるな本人の脇を固めているため、その作戦は一向に成功しないのであった。


「『賢神』と名乗るモノが『ブルーアルケミスト蒼の錬金術師』を名指ししたと言うのであれば、それほどまでなのだろう?」

「ふんっ! だからといって単なるイチ探索者! 特別扱いするから付け上がり、我々の誘いを断るのだ!」

「ふふ、ハフマンさん。秘密裏に交渉して俺ら出し抜こうとしたのに、会えもしなかったからって、逆ギレは良くないよ」

「ハフマン、貴様!」

「い、言いがかりだ! 全部あのカグラザカの言いがかりだ」


 USが誇る探索者ギルドや、探索者事業を主とする企業団の代表者が集まるこの会議では、どうすれば蒼唯をUSに勧誘できるかが議論されていた。

 とはいえ、皆、腹の中ではUSに来させたら、自分たちで蒼唯を独占しようという魂胆が見え見えなため、建設的な会議とは中々ならないのだが。

 

「それくらいにしろ。カグラザカ、お前も挑発をするな」

「ははは、ごめんごめん。だってさ面白くて」

「面白い?」

「金で釣って、力で脅して。それで通用するならそれでいいけどね。それで通用しない相手なのが分からない人ばっかりだからね」


 そんな会議で特に目立っているのは、神楽坂と呼ばれている日本人風の見た目をした、軽薄そうな笑みを浮かべる男性であった。


「それで? そんなに我々をバカにする君には、アオイ・サイトウを我が国に招待する策はあるのかい? ミスター?」

「うん? まあね」

「なに? 本当かね!」


 そんな方法があるなら早く話せとでも言わんばかりに身を乗り出してくる者たち。そんな者たちを見ながら神楽坂と呼ばれた男性は答えるのであった。


「そーだな。敢えてこの作戦に名前をつけるとするならば、「もふもふ楽園パラダイス大作戦」とかかな?」

「ふむふむ……はぁ?」


 

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