知識の泉編
第211話 セーフティは当然に
寝起きのリリスには、いやどんな状態のリリスに対しても酷な質問を投げ掛けてきた蒼唯。
とはいえ、蒼唯の質問はリリスに多少なりとも関係している事である。
リリス自身、ダンジョン核により核が無事であれば死んでも復活するダンジョンマスターと言う存在である。更には蒼唯の魔改造を受け、より不死性が増している今日この頃。
死からの復活を『死者蘇生』ととるか、『不死』と取るか意見の別れるところだが、やろうとすれば蒼唯ならばどちらも出来そうな気がしてしまう。
【…だからこそ回答に悩みますね。何故そんな質問を?】
「新しくダンジョンが出現したらしいですけど、そのダンジョンを最初に攻略した人には、何でも1つだけ質問ができるそうなんです」
【『知識の泉』が? 彼処は神々の…いや『聖神』が此方に来ているのですから今さらですね。なるほど。その1つの質問を有効に活用するため蒼唯様にこんなおかしな質問を】
「1人で納得してないで私にも説明してくれです」
当事者であり、一通り柊から説明を受けたが、適当に聞き流していたためあまり理解していない蒼唯とは対象的に、蒼唯のテキトーな状況説明でおおよその流れを把握したリリス。
『知識の泉』は『賢神』ミミルが造り出したとされるダンジョンであり、最初に攻略した者にはありとあらゆる知識を蓄えたミミルに質問できる権利が得られると言われていた場所であった。
「言われていたって、そっちの世界だと誰が質問できたです?」
「まく~?」
【いえ、私たちの世界では結局、誰も攻略は叶いませんでした】
言われていたと、リリスたちの世界では結局攻略者が出なかったためである。
『知識の泉』は戦闘が無い所謂、謎解き系のダンジョンなのだが、その難易度が高過ぎるらしく、人族はおろか、他種族の知恵者でも攻略は叶わなかったのだ。
「ふーんです。でも『不老不死』も『死者蘇生』も神様なら出来るですかね? 私には想像もできんです」
【えぇ!?】
「ぬい!?」
「リリスもぬいも、その驚いた顔は何です? 前にも言ったですけど『錬金術』は万能じゃねーです」
「まくまく~?」
蒼唯が言っても説得力の無い言葉に納得できない顔をしているリリスとぬい。
それを察したまっくよがダンジョン核を利用したリリスの不死性について尋ねる。
「リリス? ダンジョン機能を利用した復活のことです? うーんです。あれはぬいやまっくよたちに備え付けてある
【
「ぬいたちの身体が修復不能なくらい損傷した場合に、魂が崩壊しないように保護するシステムです。危険な所に行かせるですから当然付けてるものですよ。リリスは、身体の崩壊に伴って魂も崩壊していくのは知ってるです?」
【い、いえ初めて知りました】
「それだと説明が難しいですけど――」
蒼唯はこの世界で唯一と言っても良い魂の専門家である。そして嫌々ながらとはいえ『錬金術師』としてポーション等も造っていた。
そのため自覚は無いが、『死者蘇生』や『不老不死』に関連する知識は、その道の専門家が裸足で逃げ出すほど有していた。
その知識を使い簡単に生物の死について説明されたリリスは驚いていた。
【私が死ぬ瞬間、私の魂をマスタールームに移動させ、ダンジョン核の機能で産み出した私の身体のコピーに移し変えていると】
「そういうことです。それで何で『不老不死』とか『死者蘇生』が難しいかと言えばです。崩壊した魂のや自力回復が不可能なレベルの脳は私だと修復できねーからです」
【魂は兎も角、脳もですか?】
「どちらかと言えば脳の方がムズいです」
『魂への干渉』を持つ蒼唯からすれば、脳の方が専門外である。
『
言ってしまえば、複雑なシステムを構築している脳を治すにはポーションは大雑把過ぎ、そして回復力が高過ぎるのだ。
「例えるなら、ボディーソープで顔を洗うとヒリヒリしちゃうみたいな感じです」
【例え方、合っていますか?】
なんとも、ほんわかした例えだが蒼唯が、負傷した本人の回復力を高める以外の方法で脳を修復させることが出来ないと言うことは納得したリリスであった。
と同時にダンジョン核さへ無事であれば死なないと考えていた自分がかなり危うい存在であった事を今更ながら知り、ゾッとするリリスであった。
【私たちダンジョンマスターでも魂を直接攻撃されれば…】
「そうですね。まあ今は多少なら大丈夫です。『
【それは安心ですね! 出来れば付ける前に教えていただきたかったですが!】
「知ってると思ってたですよ」
【そんな世界の真理みたいな事実知りませんよ】
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