第210話 寝起きなのに
『小常闇』から目覚めたリリスを待っていたのは、あからさまに不機嫌そうにリリスを見ているまっくよと、それを宥めているぬいであった。
「
【は、はい。途中、『聖神』エルエルの介入がありました】
「
「
まっくよの怒っているたが、その怒りは『小常闇』に侵入してきたエルエルに向けられており、別にリリスに対しては何もないのであるが、まっくよの不機嫌な様子を見ると、『悪夢の国』を食い荒らされたときのトラウマが蘇るリリスには、寝起き早々見るには刺激が強かった。
そんな寝起きの一幕により多少ストレスが加算されたものの、まっくよの『小常闇』により寝る前に比べれば幾分快調となったリリスは、寝不足のイライラにより何も考えずにやってしまった、エルエルに対しての行動について振り返っていた。
【結果的には撃退できましたし、結果的にはよか――いえ、そもそも『
『
その制限がある事により、スキルの性能は、初期のぬいやまっくよレベルの『ぬいぐるみ』をほぼ無制限に召喚するという、かなりのぶっ壊れたモノとなっていた。
消耗していたとはいえ神でさへ、ぬいぐるみの波になす統べなく飲まれ消えていった所を見れば、このスキルの有用性は分かるだろう。
しかしスキルがスキルなだけに、使い所は吟味しなければならなかった。普段のリリスなら分かっていたそれを、エルエルと対峙した際のリリスは、それを理解するほど考えることにリソースを割いていなかったのであった。
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【それに、そもそも消耗していたとはいえ聖神相手に無策で攻勢にでてしまいました。反省です】
「
「
【……お二方のように、神だろうと何だろうと、取り敢えず眠らせよう、取り敢えず生やしてみようで上手くいく方ばかりではありませんよ】
「
「
【…結果的に、蒼唯様だけへの興味が私に分散したと考えれば、そこまで悪い結果ではなかったと考えることに致します】
流石のまっくよたちも、『小常闇』を要求するリリスにいつもとは異なる様子を感じ取っていたのか、落ち込んでいくリリスを慰めるという、珍しい光景が見られた。
そんな二匹の慰めもあり、いつもの様子を取り戻したリリスは、そういえば蒼唯が不在であることに気が付く。
一瞬、ぬいぐるみ造りに夢中なのかと考えたが、作業部屋であるここにいないのであれば違うだろう。
【蒼唯様はどこにいらっしゃいますか? 聖神のことも含めてお話したいのですが……】
「
【…誰にでしょうか?】
「
【何だが嫌なよ――】
「戻ったです! あ、リリスも起きたですか、おはようです」
嫌な予感がひしひしとする中、蒼唯が戻ってきた。
【おはようございます蒼唯様。呼び出されたとお聞きしましたが、何か問題でもありましたでしょうか?】
「うーんです。まあ私に直接関係する訳じゃないですけど、問題と言えばそうかもです」
【そ、そうですか。その問題と言うのは…】
「私もあまり理解できてねーてすけど…まあ、あれです。リリスは、『死者蘇生』と『不老不死』ってどっちが難しいと思うです?」
【はぁ? ……ちょっと寝起きの私には、その質問は濃すぎなように感じます】
何の脈絡もなく発せられた蒼唯の質問を聞いたリリスは、自身の嫌な予感が的中したことを確信するのであった。
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