第209話 いつもと違う
蒼唯から『聖神』が付けたマーカーを渡された際、かつて『聖神』が選定した『勇者』と敵対した組織の幹部であったため、目を付けられている可能性があると覚悟はしていたリリス。
しかしもふもふモードのリリスの可愛いさにより『聖神』からの関心を引いてしまうなんて事態は微塵も想定していなかったため、流石のリリスも動揺を隠せないのでいた。
[なるほど! 獣人族などが使う『獣化』と似た原理で、もふもふに変身しているのか! いいな、いいな]
【…私を困らせる方々は漏れ無く可愛いモノ好きである呪いでもあるのかしら】
[うん? 何か言った?]
【いえ、何も?】
ただ幸いな事に、『聖神』エルエルは、リリスの可愛さに魅入っていたため、その動揺を悟られなかった。
[サキュバスとしての特徴が可愛さとして形になってる。とっても良い]
【そうですか】
エルエルがもふもふに興味を示す。それ即ち、蒼唯への興味に繋がってしまう。
いつもならばそれを阻止すべく言葉巧みに相手を操り、世界の平穏を守るため邁進するのがリリスである。しかし今日のリリスは疲れていた。
ストレスを畳み掛けられ、何とか睡眠によりそのストレスを取り除こうとした矢先、エルエルに妨害され更なるストレスを浴びせられた。完全にキャパオーバーであった。
そもそも、リリスがリスクを承知でエルエルからのマーカーを蒼唯から受け取ったのは、蒼唯が『勇者』に選定される事により、得たスキル等を魔改造して予想斜め上な進化をしてしまう事態を恐れたからである。
しかし、最早そんな事を心配しているような段階にない。蒼唯は、自身を『
[元の世界にも優秀な職人は多かったけど、あの子ほどユニークな人はいないわ。可愛いし]
【そうですね。はい】
[やっぱり次の勇者はあの子しかいない!]
【…はい】
そう考えると、急に『聖神』エルエルも小さく見えてくる。そう見えたのは確実にストレス過多による疲労で、頭が回っていないのが原因だと思うが、この時のリリスは、確かにエルエルを、ストレスばかり運んでくる邪魔者であると認識していた。
[よし、サキュバス。齋藤蒼唯を――]
【…うるさいわ。少し黙れ】
[ここに…えぇ!?]
そのため普段のリリスなら絶対に言わないような言動が飛び出るのであった。
[い、いきなり黙れとは、良い度胸ね!]
【黙らないなら、ここから立ち去りなさい】
幼く見えても神は神である。神が魔族に馬鹿にされ素直に黙るはずもない。エルエルの身体を『
しかしエルエルは2つ失念していた。1つはこの空間に入り込むためにかなりの力を使っていること。
そしてこの空間は夢の中。『
【『
[召喚スキル? そんなモノ我輩に…か、可愛いがいっぱい!?]
【もふもふたちよ、その者を夢から追い出せ!】
[そんな、卑怯……ってこの子たち、一匹一匹力強――]
抵抗しようとするエルエルであったが、可愛いぬいぐるみの群れに抵抗空しく連れ去られてしまうのであった。
そんなエルエルを見届けたリリスは、
【デザイン担当は蒼唯様なので……さて、寝ましょ】
その場で泥のように眠るのであった。
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