第207話 お揃い
リリスは恐怖していた。色々としょうがなかったとは言え、リリスの提案によって生まれた余暇により、第2第3のぬいたちが、蒼唯の手で生み出されかねない事に。
ぬいたちも突然の事態に困惑していた。自分達が最高傑作であると分からせるために蒼唯にワガママを言った結果、最高傑作が増えるかもしれないのだ。
そんな思いを胸に抱きながら、蒼唯が『ぬいぐるみ』らしきモノを造っている様子を観察していると、不意に蒼唯が話し掛けてくる。
「なんか最近、ぬいたちもリリスもそわそわです?」
「まくま~」
【そうです。私たちは普段通り過ごしております】
「そうです? 私が何を造るか興味深々なのかと思ってたですけど。まあいいです。期待して貰ってるかもしれないですけど、今のところ、ぬいたちみたいな『ぬいぐるみ』は造るつもり無いです」
「ぬい!?」
とは言え、そんな彼女たちの考えを薄々察している蒼唯は、第3の『ぬいぐるみ』の存在を否定する。
造ろうとさえ思えば、今の蒼唯なら、ポテンシャルだけならぬいやまっくよに並ぶ『ぬいぐるみ』も造り出せるだろう。
現にぬいやまっくよを造り出した当初は、素材が集まり次第どんどん生み出そうとしていたくらいだ。その素材不足もぬいたちの活躍と『ブルーアルケミスト』を開始した事により解消されている。
しかし蒼唯は、ぬいやまっくよと同型の『ぬいぐるみ』を造ろうとはしなかった。
それは何故かと言えば、蒼唯とってぬいたちが他の製作物とは比べ物にならない程、特別な存在になったからである。
可愛い『ぬいぐるみ』ではなく、ぬいとまっくよが大好きになったため、増やすという選択肢は自然と消滅したのであった。
【ですが、今、造ってらっしゃるのは『ぬいぐるみ』ではありませんか? あ、ベアーくんやフェフェのようなタイプの『ぬいぐるみ』でしょうか?】
「うーん、違うですけど惜しいです」
「ぬいぬ?」
【惜しい…といいましても、他に『ぬいぐるみ』は――】
「まくっま! まくま!」
「あ、まっくよ正解です。答えはリリスです」
【…今造っているそれは『
「まあ、そういうことです」
「ぬいー」
『ぬいぐるみ』界の異端児リリスは、自分が『ぬいぐるみ』であるという自覚が足りていない様子であった。
「まく~?」
「誰って、もちろん私用です。この前まっくよたちで『ぬいぐるみ会議』したって自慢してたですから、私も羨ましくなったです」
「ぬい! ぬいぬい」
「まく~? まくまく」
【そ、そんな理由でですか?】
蒼唯も遂に『ぬいぐるみ』になる、といった報せを聞いたぬいたちは、三者三様の反応を見せる。
喜ぶぬい、『ぬいぐるみ』じゃなくとも参加させたのにと思うまっくよ。そして、困惑するリリスであった。
「それに、これでお揃いになるですし。あとルーシィももふもふさせれば更に――」
【それはお止めください】
「分かってるです。押し付けは趣味じゃねーです。まあ、リリスの時は半分強制っぽかったですけど」
【ははは…】
リリスにとっては大きな意味を持つ『
そのため友人とのお揃いコーデする、みたいなノリで自身が『ぬいぐるみ』になることを受け入れられるのであった。
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