第191話 似た者同士

 『天空の城』の出現に沸き立つ探索者たち。

 空に浮かぶ城ということ自体に冒険心が掻き立たれるが、攻略実績に応じて報酬まで受け取れるとなれば、挑戦したいと思う探索者は大勢である。

 しかし我先にと挑んだ『飛行』スキル持ちや、ワイバーン等の飛行能力を持つモンスターを連れたテイマーたちが、入口付近を守るモンスターたちに呆気なく倒されてしまった。

 そのため問題となるのが、入城方法である。 

 ただ、先走った結果、尊い犠牲となった飛行能力持ちの探索者たちを見れば、生半可な方法では難しいだろう。


【取り敢えず、探索者協会からは蒼唯様に依頼がいかないようにしておきますが、既に『ブルーアルケミスト』にて、そう言った類の問い合わせや注文が殺到しているようですのでご注意下さい】

「わかったです」

【それにしても、『試練の迷宮』がなぜ今、出現したのでしょうか? もう既に『勇者』がこの世界にいる可能性も】

 

 そして、リリスとしては、『天空の城』云々よりも『勇者』の仲間を選別するための迷宮、その1つが出現したという事実の方が重要であった。


「まあ、『魔王』もいるですからね。『勇者』も来ててもおかしくないですよね、ルーシィ?」

〖ふぇ? あー、うん、そうだね〗

「まくまく~」

「ぬいー」

「さては、まっくよたちと遊ぶのに夢中でこっちの話聞いてなかったですね」

〖そ、そんなこと…ないよ?〗


 蒼唯はリリスから『勇者』に関する色々を聞いていた。『勇者』がルーシィを封印した事。封印されたとの一報が流れた直後から姿が見えなくなったため、相討ちだったのではと噂が流れた事。


【その後、すぐに私はこちらの世界に召喚されたので、『勇者』がどうなったのかは分かりません。ですが】

「この場にルーシィがいるですからね。それで、どうなんです?」

〖『勇者』さん? うーん、私も封印されちゃった後の事はよく分からないけど、あっちの世界で農業でもやってると思うよ?〗

【はい?】


 予想外のルーシィの返答に戸惑うリリス。そんなリリスを置いて話を続けるルーシィ。


〖私も『魔王』嫌だったけど、向こうも『勇者』嫌だったみたいなの! だから、私が『勇者』スキルに勇者さんから出てくように『命令』して勇者さんを『勇者』じゃなくしてあげたの。まあ、勇者さんが協力してくれたからできたけど。それで、その時、一緒にいた『聖女』さんと一緒に農業でもやるとか言ってたよ〗


 『魔王』も『勇者』も自分の役割を重荷に感じていたという話なのだろう。そして、『魔王』には『勇者』を『勇者』で失くす方法があった。


【…となると、彼がこっちの世界に来たところで『勇者』スキルは持っていないのでしょうか? いや、『聖神』が再度付与する可能性も】

「何と言うか、『勇者』も『魔王』も似た者同士ですね」

〖えへへ〗

【…というか、その話だと、なぜルーシィ様は封印されたのでしょうか?】

〖…えへへ〗


 笑って誤魔化そうとするルーシィだが結局、『勇者』でなくしたお礼に封印してもらった事がバレ、リリスから大説教をくらうのであった

 

 







 




 

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