第189話 留まることを知らない
3年の学年主任というほぼ関係性皆無のおじさんからの頼まれ事というハプニングはありつつ、始業式は無事終了した。
今日はこの後、授業も無いためそのまま下校となる。
ダンジョン災害の影響もあり、冬休み期間中は殆ど会えなかった蒼唯と輝夜は、近況報告も兼ねて一緒に下校していた。
「それで、受験生の睡眠サポートはやるの?」
「まあ、これまでまっくよが独自でやってた、お昼寝会とやること変わらねーですからね」
「まく? まくまく~!」
「なるほどです。それは失礼したです」
蒼唯の言葉に、まっくよが反応する。
魂で繋がっている蒼唯には、まくまくだけで全てが伝わるのだが、生憎第3者には、雰囲気からまっくよが蒼唯に異議を唱えている気がするくらいしか伝わらない。
「えーと、まっくよは何て?」
「同じ『小常闇』でも、状況に応じて睡眠の種類を代えてるから、変わらなく無いらしいです」
「えーとつまり、まっくよは、疲れを取る『睡眠』とか記憶力を高める『睡眠』とか色々なタイプの『睡眠』を使い分けられるってこと?」
「まく~!」
基本的にまっくよは、睡眠で得られる効果全てを詰め込んだ『欲望詰め合わせセット』の『睡眠』を提供する。しかし、その『睡眠』には、それなりの睡眠時間が必要であるため、お昼寝会や今回依頼された勉強の合間に、という短時間の睡眠では使えない。
そのため「
「まっくよは、『食トレ』で得たリソースの多くを『小常闇』に注ぎ込んでるですからね。満遍なく成長してるぬいとは違うです」
「まくまく」
「成る程ね」
まっくよは、蒼唯が造り上げた時点でほぼ完成していたと思われていた『小常闇』を、半年以上の時間を掛けて磨き上げたのだ。それくらい出来てもおかしくはないのである。
「そう言えば、受験って言ったら私たちの高校の今年の倍率が凄くなりそうって噂だよ」
「倍率です?」
「そそ、去年、私たちが受験したときより遥かに高くなりそうなんだって」
蒼唯たちが通う高校は、普通の授業も行いつつ、ダンジョン学などにも力を入れているため、ダンジョンや探索者に少し興味がある、くらいのライトな学生に人気な高校ではあった。
しかも蒼唯が入学して以降、特に2学期頃から、そっち方面の授業により力を入れている印象がある。
「何かのニュースで、ダンジョンとか探索者に興味を持つ若者が増えてるみたいなの見たですけど、その影響です?」
「うーん、まあ、それはあるかも」
「でも、ダンジョンとか探索者について、専門的に教えてる高校とかもあるですよね? そっち行けばいいのにです」
「そういう高校には無い魅力があるってことじゃない?」
「そう言うのに疎い私には理解できない領域ですね」
最近、ダンジョンや探索者に興味を持った若者が増えた原因、そして蒼唯たちが通う高校にしかない関連性を考えれば、何故倍率が高まったのかは自ずと分かることだが、どちらもピンとこない蒼唯には、分かるはずの無い事であった。
―――――――――――――――――
今年の○○高校の倍率、ヤバイことになりそう
1
中学生でギルドとかに所属している有望株が、国立の探索者養成高校とかに進まず、○○高校への進学を宣言してるらしい
2
○○高校?
どこそれ?
3
聞いたこと無いな
ダンジョン所有して、受験でダンジョン探索とかできる探索者養成高校蹴ってまで行く価値ある所なん?
4
○○高校…
どっかで聞いたことあると思ったら、蒼唯のいる学校じゃね?
5
あ、そうだな
6
それは納得
7
ギルド所属しているなら、別に学校でやらなくてもダンジョン探索の経験とかは積めるしな
それより『蒼の錬金術師』と知り合いに馴れるチャンスの方が何倍も重要かもしれん
8
まあ、そういう考えの人は大抵泣きを見ていますが
9
それでもだろ
仲良くなった時の恩恵が計り知れない
10
『ぬいぐるみ少女』とか『流星』の神楽坂輝夜とかね
11
あとは、蒼唯や、ぬい、まっくよのファンとかが入学を熱望してる
噂だと、蒼唯がほぼ毎日のように『ぬいぐるみ』たちを学校に連れてきてるらしい
12
リアルぬい、リアルまっくよか~
それは確かに見たいな
13
ぬいやまっくよを連れて登校って、校則は…
14
ま、まぁ、鞄にぬいぐるみ付けてる女子高生とか多いしな~
15
あんな『ぬいぐるみ』付けてる子が多かったら困るけどね
16
でも、それならその高校の倍率が爆増しても不思議じゃ無いかもな
17
でも、蒼唯は、後輩に囲まれたら凄く嫌な顔しそう
18
それよりまず、まっくよに、おやすみなさいされて終わりだろ
19
教師 学校で居眠りするな!
生徒 まっくよにやられてました!
教師 そ、そうか。なら仕方ないな
って会話が日常化してしまう!?
20
まっくよに眠らされたら、居眠りというかガチ寝だろ
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