天空の城編

第188話 冬休みが明けて

 冬休みも終わり、今日から新学期が始まった。

 蒼唯は人の視線に鈍感な節があるため気にしていないが、一緒に登校していたまっくよは、これまで以上に周りからの視線の多さを感じていた。

 特に学校に近づくにつれてその視線は多くなっているようである。


「まく~」

「え、そうです? まあ、まっくよは可愛いですからね。久し振りにまっくよを見て、皆見惚れてるですよ」

「まくまく」

 

 蒼唯は基本的に冬休みの間、家で引き込もって趣味活していた自覚しか無いため、まっくよが、視線について言及してもイマイチ、ピンと来ていない。

 しかし、蒼唯の研究用ダンジョンのプレゼントから始まり、ダンジョン災害終結のニュースと共に終結された立役者として蒼唯たちの名前が連日報道されているので、そんな有名人が同じ学校の生徒であればそれは、ふと、見てしまうものだろう。

 

「そんなものです?」

「まく~」


 蒼唯は、学校どころかクラスメートに有名人がいたとしても、興味の無い分野であれば、気にしない女の子なため、他人をチラチラ見る感覚があまり理解できていないが。


 教室に到着すると、鈍い蒼唯も流石に、クラスメートから発せられる話し掛けたいオーラに気が付いたため、先に登校してきていた輝夜ガードを利用することにした。


「お疲れです輝夜。やっぱり随分眠そうですね」

「まくまく、まく~!」

「そんなに怒んないでよ、まっくよ。一応、徹夜は回避したんだから」

「そうです、まっくよ。輝夜は輝夜で忙しかったですよ。いつもみたく宿題をサボってた訳じゃ無いです」

「…いつもみたくは余計だよ蒼唯」


 輝夜は中学時代から、ダンジョンに入り浸っており、長期休暇は宿題など放って、遠方のダンジョンをエンジョイしていたのだ。

 それに比べれば、『氾濫』によりダンジョン外に溢れたモンスターの対応や救助活動をしていて時間の無かった今回は、逆に宿題をやっただけ偉いと言うべきであろう。


「と言うか、眠いなら始業式が始まる時間まで寝てると良いです」

「あー、それは助かる。お願いします」

「まくま! まく~」


 とは言え、激務をやり遂げた後、そのままの勢いで宿題まで終わられた輝夜は、疲労困憊であったので、蒼唯からの、まっくよによる『眠り』提供の提案を即座に受け入れたのであった。


 その後、味を占めたまっくよは、校内を徘徊し出し眠そうな生徒や先生に対して『眠り』を提供していくのだが、想定以上に寝不足な者が散見された。

 輝夜と同じ様に最終日近くに急いで宿題を終わらせた者や、冬休みを謳歌した結果、生活リズムが崩れた者、更にはもう直ぐ受験のため日夜勉強に励む3年生など、冬休み明けは寝不足者の宝庫となっていたのであった。


「まくまく!」

「まあ、その結果、たくさん眠らせられたんだから良いことです」

「まくま…」

「しっかり寝てても、まっくよの眠りには勝てんですよ」

「まく~」


 蒼唯の言う通り、まっくよの『眠り』から目覚めた者たちの元気度合いは、凄まじいものがある。

 尚、まっくよの絶大なる『眠り』の効果を見た3年生の学年主任は、まっくよに土下座する勢いで、受験シーズンが終わるまでの受験生の睡眠サポートを願い出てくるのであった。

 

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