第185話 どこに住むか

 昔話も一段落した所で、蒼唯は、ふと気になっていた事を聞く。


「そういえば、ルーシィはこれから何処に住むです?」

〖確かに! 身体が元に戻ったから住むところは必要か…〗

「住むところ無いならここに住めば良いですけど」

「ぬいぬー」

「まく~」


 元々、身体は旧『狂気の研究所』に、魂は『ミラグロ』に保管された状態でこちらの世界にやってきたルーシィは、リリスたちのように自分のダンジョンを有していなかった。

 蒼唯の家は、両親が年がら年中仕事で留守にしているので、部屋は余っている。ぬいとまっくよもルーシィを気に入っているようなのでこの家に住むこと事態は問題ない。

 

 しかしここでリリスのストップが入る。


【それは止めた方がよろしいかと思います】

「そうです?」

【はい。今回のダンジョン災害終結から蒼唯様要素満載のダンジョン誕生までの一連は、世界中で注目されております。そんな中、謎の入居者が増えたとなれば、ルーシィ様の素性が探られかねません。今も高位の鑑定系スキルや探知系スキル保持者がここら辺に出没していると、報告を受けていますし】

「なら、ルーシィもリリスと同じように、ぬいぐる――」

【ですので、一先ずルーシィ様は『吉夢の国』に来ていただきます。彼処ならまっくよ様のような規格外な存在が食い荒らさない限り、ルーシィ様の存在を隠すことが出来ますので】


 本当の意味で夢の国である『吉夢の国』では、まっくよのような、夢に干渉できる一部の例外を除き、不可侵な領域を造ることが可能である。

 そのためリリス以上に素性が公開されると不味いルーシィを隠すのにはちょうど良いように思える。


「まあ、別に誰に何を探られようとも私は気にしないですけど、リリスやルーシィが困るかもですもんね」

〖じゃあ、私はリリスさんのダンジョンにお世話になるってこと?〗

【はい。ルーシィ様が嫌でなければですが】

〖嫌じゃないよ! 久しぶりに一緒に居れるの嬉しい〗

【では、そう言うことよろしくお願いいたします】


 リリスの提案により、ルーシィの居場所が決定するのであった。



―――――――――――――――――


 ルーシィに『吉夢の国』を紹介し終え、『執事シープ』たちに世話を任せ終えたリリスは、自室であるマスタールームで胸を撫で下ろしていた。


【何とか、上手くいきましたね】

まっくまやっぱり~」


 そんな最中、後ろから突然声を掛けられて驚き、振り返る。声の主はまっくよであった。


【え、あ! まっくよ様でしたか】

まくまなんでまくなの?」

【何でとは、何の事でしょうか?】

まくまくわざわざまくまはなす

【…まっくよ様にはお見通しでしたか。ルーシィ様の権能は蒼唯様と相性が良すぎます。間違いなく、途轍もない化学反応が発生して手が付けられなくなりますので】


 色々と理由を言ったが、蒼唯の家にルーシィを住まわせなかった本当の理由は、ルーシィが近くにいることによって、蒼唯の制作をお手伝いするという事態を防ぐためであった。

 ルーシィの性格上、住まわせて貰っている立場では、積極的にお手伝いをしようとするだろうし、蒼唯もルーシィの権能を目の当たりにすれば、上手く活用してしまうだろう。


【ルーシィ様の『命令権』は、素材にお願いして、性質等を変化させるので、付与などとは別の強化方法と言えます】

まくまそれで?」 

【つまり、ルーシィ様と蒼唯様とで二重に強化できるということです。それを更に蒼唯様が加工する】

まくまくすごそう

【とても私の手に終える代物に留まる未来は見えません。ですので、少し強引にですがルーシィ様はこちらでお預かりする運びにしました】

まっくまなっとく


 リリスの説明に納得するまっくよ。

 こういう時、まっくよは理解が早いと言うか、蒼唯のアイテムがバグっているため、日々胃を痛めるリリスの立場を慮れる良い子なのであった。

 

まくまばれちゃまくまくだめだよ

【分かっております。まっくよ様が蒼唯様優先な事も】

まくまくならよし」 

 



 


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