不思議な国のアオイ 後編
突然、地面が隆起したせいで転んでしまい、捕まってしまった白ウサギは困惑していた。
この世界は、とある女王が支配しているため、誰も女王の決定には逆らえない。
白ウサギがこの世界にやって来た主人公の前を通り過ぎ、その白ウサギを追い掛けて不思議な国に迷い込むことも決定されていた筈なのだ。
それなのに、この少女は、その決定に抗って見せたのだ。
【たいへんだ、たいへんだ!】
「さっきからお前はそれしか喋れないです? 他の言葉も喋れです」
【たいへ――あれ、喋れる。喋れるよー!】
白ウサギの喋れる言葉が制限されていたのも、その女王の決定であった。
しかしその決定は、少女の手によって容易く覆されるのである。
【ありがとうございます! ありがとうございます!】
「良く分からんてすけど別に良いです」
白ウサギは、その少女に希望を抱く。そしてとある頼みごとをするのであった。
――――――――――――――――――
「皆も助けてくれって何です?」
【このせかいにいるじゅうみんたちは、みんな、じょうおうにむりやり、したがわされているんだ! でもキミのちからがあれば、みんな、かいほうさせてあげられるんだ】
「…なんだか面倒な話になってきてるですね。私の夢なのに」
【おねがいだ!】
「はぁー、まあ、夢から覚めるまでの暇潰しと思えば良いですか」
蒼唯は白ウサギのお願いを聞いてあげる事にするのであった。
白ウサギの案内で、不思議な国を観光しながらその合間に不思議な国の住民たちを解放していく蒼唯。
蒼唯に触れる前は、住民たちは皆、変な者ばかりなのだが、蒼唯に触れると皆、正常に戻りお礼を言って立ち去っていくのであった、
「何でわざわざ、変にするです? どうせ変えるなら可愛くかえればいいですのに? その女王?とは趣味が合わんですね」
【あとのこったじゅうみんは――あ、じょ、じょうおうさま!】
【白ウサギ! それにそこのお嬢ちゃん! よくもやってくれたね】
女王が絶対の世界で好き勝手していた蒼唯と白ウサギを、女王が放っておく筈もなく、女王はトランプの兵隊を連れて蒼唯たちの元にやって来る。
トランプ兵に囲まれた蒼唯は、特に焦る事もなく、じっくりとトランプ兵を見つめながら『錬金術』を行使する。
「…やっぱり趣味が合わないです、ね! 可愛くなれです!」
すると、トランプ兵たちに描かれた、柄が可愛いデザインのモノに変わる。
【え、そこですか?】
「トランプを別のモノにしちゃうのは可哀想かなと思ったですけど」
【ふ、ふざけるな! 私の世界で勝手にするんじゃないよ! お前も『トランプになれ』!】
その事に怒った女王が、蒼唯がトランプになる決定を下す。
しかしその決定を蒼唯は却下する。
「いやです」
【い、いや? ふざけるな! 『トランプになれ』】
「だからいやです。それより、トランプ兵だけじゃ可哀想ですし、お前も可愛くしてあげるです!」
【い、いや、『私に近づくな』、『近づくな』。いや、いやぁぁーー】
蒼唯がそう言い女王に近づいていった瞬間、女王の叫びと共に、蒼唯の視界が真っ暗になるのであった。
目が覚めると蒼唯は、自分の部屋の床で寝転んでいた。
「ふぁー、やっぱり夢だったですね。変な夢でしたね。っと、アイテムの鑑定を…あれ? 本は何処行ったです?」
眠い目を擦りながら、鑑定途中であった本を探す蒼唯であったが、結局本が見つかることは無かったのであった。
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