不思議な国のアオイ 前編
エイプリルフールネタ?
期間限定予定
☆☆☆☆☆
もうすぐ、春休みが開け、蒼唯ももうすぐ中学2年生となる。そんなある日、蒼唯は『ダンジョンショッピング』で安値で手に入れた、とあるアイテムを『錬金術』によって鑑定していた。
「ふぁー、眠いです…それにしても変な本ですね。『不思議な国の○○○』なんて題名も変ですし、付与されてる効果も分かりにくいです」
『錬金術』は扱いに難しいと坪夫妻や幼馴染みの輝夜から言われていたが、この1年適当に練習していたら結構、様々な事が出来るようになっていた蒼唯。
今日は『錬金術』での鑑定に挑戦しているのだが、その日の蒼唯は、前日徹夜で縫い物をしていた事もあり、思考力が著しく低下していた。
「うーん、師匠とか坪さんは、こういうアイテムは無闇に開けない方が良いって言ってたですけど、面倒ですし開けるです?」
そのため普段なら止めておくような事をしてしまう。
本を開くと、即座に本に付与された効果が発動するタイプのアイテムであった。その本に付与された効果は、アイテムを使用した者をその本の世界に引きずり込むと言うトンでもない効果であった。
「うん? なーんか引っ張られてるですー?」
そんな効果に寝不足でぼーとしている蒼唯が抗える筈もなく、呆気なく本の中に閉じ込められてしまうのであった。
そして、部屋には本だけが残される。その本の題名は元の題名から『不思議な国のアオイ』に変化しているのだった。
―――――――――――――――
気が付くと、蒼唯は、花畑に立っていた。
「あれです? 何で私、こんなところにいるです? えーと確か、家でアイテムの鑑定をしてたと思うですけど…」
寝惚けた頭で先程までの記憶を遡っていると、蒼唯の目の前を、白いウサギが通り過ぎていくのである。
しかもジャケットを羽織り、右手には懐中時計を持っている珍しいウサギが喋りながら。
【たいへんだ、たいへんだ!】
それを見た蒼唯は確信する。
「成る程、これが明晰夢ってやつですね。こんなにハッキリしてるですね。確かに昨日は無理しすぎたですから寝ちゃったですね」
夢であると。
そうでなければこんな花畑で、珍しいウサギを見ることの説明が付かないからである。
夢であると確信した蒼唯は、折角なので普段ならしないような事をしてみる。
「…てことは、夢なら何でもできるですよ、ねっ!」
【たいへん、ってうへ?】
「やっぱり夢ってスゴいです。『錬金術』で地面を隆起させれたですよ」
蒼唯が『錬金術師』のジョブを得た際に、一緒にダンジョンに潜っていた輝夜が、『錬金術師』は『錬金術』を使い、地形を操作したり、即席で様々な武器を生み出したりして戦うジョブだと世迷言を言っていたことを思い出していた。
そのため珍しウサギに向かって『錬金術』を使ってみると、その世迷言が実現した。
『錬金術』で生み出した地面の出っ張りにウサギは足を引っかけ転倒する。
「中々に可愛らしいウサギですね。流石、私の夢に出てくるだけはあります!」
【へ? なんのことですか?】
実際には、本物の地面を隆起させたのではなく、本の世界、つまり蒼唯は現在、アイテム内に囚われているため、アイテムを改造できる『錬金術』によって、この世界に干渉できているだけなのだが、今現在の状況を夢だと疑わない蒼唯は勘違いしたままなのであった。
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