第180話 感動の再会
肉体にも、地面にも生やされた『魔王』は、悲しそうな目で『ぬいぐるみ』たちを見つめていた。
【……『ミラグロ』狙いって言うか、私が目的だったのか】
「
【その装備は私の『命令権』対策でしょ?】
性格的にあまり戦闘向きでは無いが、戦乱真っ只中『魔王』として君臨していた関係上、それなりに経験は豊富な彼女。そんな彼女は『ぬいぐるみ』たちが身に付けている装備が自分の権能対策であると見抜いていた。
『ミラグロ』を攻めるためならば、その装備は無意味なモノであるため、『ミラグロ』を攻撃しに来たのではなく、彼女、若しくは彼女の権能が目的なのだと考えたのだ。
「
【生やされている状態で、装備を無効化してる暇はないかな? 詰んでる…いや摘まれるかな?】
「…
『命令権』をそれらの装備に向かって行使すれば、装備の効力を無効化する事は可能である。
しかしそんな隙をこの化物たちが与えてくれる筈もない。
人型の『ぬいぐるみ』は兎も角、犬と猫の『ぬいぐるみ』はまるで茸でも見るかのような目で見つめてきているが、そんな状態でも油断はしていない。
「
「
【おそらくは。少なくともこの身体の本来の持ち主である『神聖騎士団』団長アーサーでは無いようです】
そんな会話も聞こえてくるが、安易に反応すればやぶ蛇になりかねないので、様子を伺っていると、化物集団の中でも唯一何とかなりそうな人型『ぬいぐるみ』が話し掛けてくる。
【蒼唯様のアイテム関連のイレギュラーで状況が好転することがあるとは思いませんでした。…貴女は『魔王』…いやルーシィ様ですね?】
【え、あー、まあ…】
【『魔王』に成りたくないのに、幼少期に先代に誤って『命令権』で『パパ、魔王ちょうだい』と言ってしまった結果、就任させられてしまったルーシィ様ですね】
【ふぇ? な、何で?】
【困った案件が来ると『何とかして』と私やサタンに押し付けていたルーシィ様ですね】
【まさか、リリスさん? リリスさんなの?】
【はい、ルーシィ様…お変わりはかなりありますが、お元気そうで何よりです】
【リリスさんも何だか可愛らしくなって…似合ってるよ?】
【それは、蒼唯様も喜ばれます】
上司と部下と言うよりも、年の離れた友人同士というような関係性が感じられる、生やされたルーシィとぬいぐるみのリリスであった。
そんな暖かい空気が漂う中、ぬいたちは冷静であった。と言うよりもマイペースであった。
「
【あ、そうですね。取り敢えず、ルーシィ様の身体を取りに行って、蒼唯様に頼んで魂を移して貰わなければ】
【身体もあるんだ! それは助かるかも】
呼び掛けられたリリスは、今後の対応について考えるが、ぬいたちが考えていたのはそんな先の事では無かった。
「
【…良いとは、何でしょうか? こういった時に聞かれる確認に良いイメージは全くわかないのですが】
「
【いや、良い訳無いですよな? え?】
「
「
【ルーシィ様は食べ物ではありませんから! 食べるのは…
「まく~」
「ぬいー」
【え、え? 食べる? リリスさん、どういう事?】
『ミラグロ』で魂だけでも混乱せず、突然『のこちゃん』に襲われても動じなかった『魔王』ルーシィも、ぬいたちの会話には驚愕しっぱなしなのであった。
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新作を投稿しました。
別サイトで投稿してた作品を修正して投稿予定です
擬似転生記
https://kakuyomu.jp/works/16818093074206160522
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