第160話 冬休みの予定
期末試験で知っている事を何の気なしに解答した所、解答が本当かどうか判断するために『錬金術』で解答通りに出来るかやらされた蒼唯。
座学のみの試験だと思っていたが、突発での実技試験にかなり驚かされた。
「ダンジョン学って突発で実技試験とかあるですね? 大変です」
「まく~」
「いやー、期末試験で未発見の新事実を解答しちゃったらそうなるよ。先生たちどころか専門家とかでも正解を知らないんだから」
「先生が正解を知らないような問題は、出さないで欲しいです」
そう蒼唯は言うが、本来であれば『妖精の粉』の問題はダンジョン学でも基礎中の基礎な問題であった筈である。不幸な事に彼女の知識の深淵に触れてしまったがために、魔の問題と化してしまっただけである。
蒼唯の中では常識でも、世間的には世紀の大発見というモノは『妖精の粉』以外にもゴロゴロしているであろう。再発防止策としては、蒼唯に対して素材やアイテム関連の問題を出さない事だが、複数のダンジョンマスターを配下に従えている蒼唯は、いつ爆発してもおかしくない情報を幾つも抱えており、その範囲も広い。そんな事情を知る由もない教員たちが、それらを全て避けた問題を出すのは至難の業である。
「というか一般的に『妖精の粉』って魔力回復の素材として扱うんですね。私、『妖精の粉』をそんな訳分からん使い方したこと無かったです」
「訳分からなくないよ! 逆にそれを知らない方が訳分からないからね」
そもそも蒼唯のダンジョンや素材、アイテムの知識は殆どは独学である。そのためそれらの分野で信じられている通説や常識に疎い。そのためどの情報がどれくらい重大なモノであるか等は分からないため、今回のような事態になるので質が悪いのである。
そんな急遽行われた実技試験というアクシデントはあったものの、期末試験も無事に終了し冬休みも間近に迫ってきていた。
日数的には夏休みに見劣りするが、クリスマスにお正月とイベントが目白押しな冬休みである。
「私は、ギルドの皆と探索三昧の予定だけど、蒼唯は何か予定あるの?」
「私は特に無いですね。でもまっくよたちは忙しそうですよ」
「まくまく」
「へー、そうなんだ」
蒼唯もそうだが、ぬいやまっくよも意外にイベント事は全力で楽しむタイプであるのだ。この前のハロウィーンでは仮装まで用意してパーティーをしていた程だ。
そのためかイベントに因んだ予定を立てているようで、特にまっくよの予定は凄まじい。
「クリスマスは、夜の間ずっと働いて大変なサンタクロースを寝かして上げるって張り切ってるですし、」
「まく~!」
「うん、止めてあげてよ! 他の子たちにプレゼント配達できなくなっちゃうじゃん!」
「正月は初日の出に勝って見せるって意気込んでるです」
「まくまく!」
「勝つって何?」
「よく分からんです。テレビで寝正月ってのを知ってやる気になってるです」
一般的な予定とは異なるが、まっくよは冬休みにやることが詰まっているのである。
「ぬいも正月太りを、正月は何でも食べて良い期間だと勘違いしてるみたいで、色々と食べ尽くす計画を立ててるみたいですし」
「怖いよそれ」
「まあ、予定は予定です。夏休みも色々と予定立ててたですけど、忙しくて全然予定通りにいかなかったてすし」
「そ、そうだね」
ぬいとまっくよが予定通りの冬休みを過ごしたならば、世界への影響は凄まじい予感がする。そのため2匹の予定は是非とも頓挫して欲しいなと心の中で思う輝夜であった。
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