第144話 蠱惑魔
柊は蒼唯と出会った頃から、蒼唯の性格を見抜きそれに応じて対応してくれていた。蒼唯の『錬金術師』としての才能を買っていたため、蒼唯が探索者業界を見限ることが無いよう細心の注意を払って接してきていた。
しかし、蒼唯にしか解決できないレベルの問題が発生し、それを蒼唯の優しさに頼り解決してもらうという状況な続く中で、気がつけば蒼唯の優しさに甘えることに慣れてしまっていた。
【それが一概に悪いこととは思いません。蒼唯様にしか解決不可能な問題を蒼唯様に頼むのは普通のこととですので】
「
その結果、蒼唯が承諾する依頼の幅が本人も無意識の内に拡大してきているのが一番の問題である。
頼む側も頼まれる側もが慣れてしまえばどんどん幅は拡大していくだろう。であればどうするべきか。
「
【はい。蒼唯様は、ダンジョン関連の依頼ならばぬい様とまっくよ様に頼みますが、そのときぬい様方の意思を一番に尊重しますので】
「
ぬいとまっくよは、蒼唯に頼まれればどんなことでもやるが、蒼唯はぬいたちの意思を無視した指示は絶対にしない。
であれば、ぬいとまっくよが先にワガママを言えば、蒼唯はダンジョン関連の依頼は受けないし、頼まないだろう。
「
「
【分かっております。量産型の簡略版『小悪魔化』なら兎も角、沙羅様のお父様に施された『小悪魔化』には、アレがありますからね】
蒼唯がこの件に介入しなかった場合、解決するのは沙羅たちになるだろうとリリスは予想している。となるとやっぱり問題解決に蒼唯が必要であると言う意識は抜けないだろう。
そしてその認識は正しいだろう。比較的始めの方に蒼唯たちによって蹂躙されたリリスですら、今の探索者たちを破滅させられる実力があるのだから。
【柊様に自覚させる意味でも一度NOを提示すべきだと愚考しました。ぬい様とまっくよ様にはご無理をお願いしてしまいましたが】
「
「
【ありがとうございます】
ぬいとまっくよから許されほっとするリリスであった。
―――――――――――――――
蒼唯の治療により、『小悪魔化』を習得した沙羅の父親、彬羅。色々とあったが強化兼変身スキルを手にし、娘と一緒に探索も出来るという不幸中の幸い状態を謳歌していた。
これで娘に尊敬される程活躍できたら最高であったのだが、人生そう上手くはいかないものである。
「ベアー!」
「あ、また一匹でた! 『
「………」
蒼唯作の『ぬいぐるみ』ベアーくんは兎も角、中学生になったばかりで、探索者歴半年程の沙羅すらもかなりの練度で動けていることに驚愕する彬羅。
「…話には聞いていたがこんなに強くなっていたんだな」
「そうかな? 強くって言ってもベアーくんのお陰だからなー」
「ベア? ベアベア!」
「能力的な強化はベアーくんのお陰かもしれないが、位置取りやタゲ取り等の上手さは沙羅自身の成長だろう?」
「そうかな?」
そういった点を教えてポイントを稼ごうとしていた彬羅の目論見が外れたので間違いない。
「でもそれならお父さんも凄いよ! 『
「ベアベア!」
「そ、そうか。ありがとう。因みに沙羅は蠱惑の意味は知っているかい?」
「えー、分かんない。虫がいっぱい目の前にいて困惑しちゃうみたいな感じ?」
「まあ眩惑とか幻惑みたいな感じだね~」
「ベア~」
そんな平和な会話をしながらダンジョンの奥地に進んでいくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます