悪魔編

第137話 デメリットスキル

何でも頼み放題キャンペーン(保護者の審査があります)を密かに開催中の蒼唯であったが、本当に個人的にやっているだけなのでいつも通りの依頼しかこない。


「うーんです。折角キャンペーンを開催中なのにです」

【誰もキャンペーンの存在を知りませんので当然だと思いますが。キャンペーンをしていることを『ブルーアルケミスト』等で告知すれば、依頼の数は青天井になりますが、そんなに依頼が来ても飽きるから嫌ですって仰ったのは蒼唯様ですよ?】

「ぬい!」

「まく~」

「むむむです」

【私としましては、このまま依頼が来ない方が気が楽なので歓迎ですが】


 蒼唯が世界的に有名になった結果、蒼唯が可愛いモノに関する依頼しか受けないという事も世界中に広まった。

 そして、強制的に無理な依頼を受けさせようとして、壊滅的な打撃を受けた国際探索者協会という悪い例が存在する。

 その結果、下手に蒼唯とコンタクトを取らず、蒼唯周りの『ブルーアルケミスト』関係者を通じて依頼をした方が安全だと考える者が多く、明らかに蒼唯の機嫌を損ないそうな依頼は柊たちが事前に弾いてしまうのである。


 そのため普通のルートから蒼唯に可愛いモノ関係以外の依頼が来ることは無いのであった。あるとすれば、


「あ、沙羅からメッセージです」

「ぬいぬい!」

「この前、ベアーくんのメンテナンスしたばかりですし違うと思うですよ。それに先輩風吹かせているのは良いですが、どちらかと言えばベアーくんの方が先輩ですよ?」

「ぬ、ぬい!」

「まく~」


 友人からの緊急の依頼であろう。


沙羅:「急に連絡してすいません! 今、お時間よろしいですか?」


蒼唯:「大丈夫です。何か用です?」


沙羅:「お父さんが、お父さんが倒れたんです!」


蒼唯:「落ち着いて詳しく話すです」


 沙羅は酷く慌てている様子であったため、事情を聞くのに少し時間が掛かった。

 話はこうである。沙羅のお父さんも探索者として活動しているのだが、少し前に体調不良になった。とは言え特に酷い症状も無かったので自宅で療養していた。

 そんな中、今朝、急に症状が悪化し始めポーションを使ったり『神聖魔法』を掛けて貰ったりもしたが悪化の一途を辿っているとの事であった。

 

蒼唯:「ポーションが効かないなら普通の怪我とかじゃないですし、『神聖魔法』が駄目なら『呪い』系でもないです?」


沙羅:「『聖域』の司祭様も原因が分からないって言ってました。しかもお父さん以外にも倒れた人がいるって…」


蒼唯:「取り敢えずそっち向かうですから、待っててくれです」


 蒼唯は沙羅とのメッセージを終えると、リリスたちに指示を出す。


「取り敢えず『真理の眼』で視て原因を探ってくるです。ぬいは付いて来てくれです」

「ぬい!」

「まっくよ残って必要なアイテムを『茸猫』で運ぶ役です」

「まく~」

【…少し嫌な予感がいたしますので、私は情報収集させていただきますね】

「頼むです。じゃあ行くです!」


 役割分担が終了したため、蒼唯は沙羅の家に向かうのであった。


 沙羅の家に着いた蒼唯は、直ぐに沙羅の父親を『真理の眼』で視た。

 すると予想通り、普通の怪我や病気、ダンジョン特有の『呪い』等の状態異常では無いことが分かった。


「スキルが悪さしてる感じですね。これだと『万能霊薬エリクシル』とかのポーションが役に立たんです」

「で、デメリットスキルってことですか?」

「よくわからんですけど、多分そうです」

「何もしてないのにこんなに衰弱するデメリットスキルなんて!」


 デメリットスキルとは、使用にリスクがあるスキルの総称である。多くのデメリットスキルは、リスクに見合うリターンがあるが、中にはデメリットしかないスキルも存在する。

 そして問題なのは、スキルをどうこう出来る者など普通はいないため、取得してしまったら最後、デメリットに一生付きまとわれる点にある。


「…取り敢えず原因のスキルをどうにかしたいですけど、勝手に他人のスキルを弄るのは気が進まんですね」

「で、でも」

「一旦、スキルを不活性化させて、沙羅のお父さんの意見を聞きたいです。よし、取り敢えず『精鋭無職エリートニート』にしてスキルを使えなくさせるです」

「ふぇ?」


 勝手に他人のスキルを弄るのも勝手に他人を『無職』にするのも、大差無い気もするが、蒼唯的には違うようであった。

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