第128話 狂気の研究所
家に戻ってきた蒼唯とまっくよは寛いでいた。
「やっぱり仕事としてやってる人の考えは新鮮だったです」
「まく~」
「まっくよは途中から、うとうとしてる人たちの眠りを深めて遊んでたですよね?」
「ま、まく~?」
「あんまりイタズラばっかりしてると――」
【蒼唯様!】
「ぬいぬい!」
「わんわん!」
「こら、こはく。慌てすぎると怪我するぞ」
蒼唯たちが今日の特別講義について話していると、黒幕探しで奔走していた筈のリリスたちが帰ってくる。
「お帰りなさいです。随分慌ててるですね? 黒幕見つけたです?」
【『吉夢の国』に『
「なのに慌ててるってことは『魔王』さんについて何か分かったです?」
【はい】
『記録の回廊』とそれを存分に使える『魔力炉』、それにどこで使えば良いかサポートする『名探偵』こはくがいたため、黒幕探しは即座に終了した。
その者は一般の探索者であり、リリスの下僕の協会職員に調べさせたところ、直ぐに住居が分かった。相手は『魔王』が行使する権能に類似した能力を使う可能性もあったが、蒼唯にその対策用のアイテムを造って貰っていたのでその者の住居に乗り込むことになった。
【結果的にその者が使う能力は『魔王』の権能でした。ただ『命令権』ではなく『代行権』でしたが】
「代行権です?」
【あの方の権能の一つに、自身の力を他の者が行使出来るようになる能力です。『災厄の小箱』を実行犯に渡した者は、『命令権』で操り人形にされた上で『代行権』を与えられていましたが】
「じゃあ、真の黒幕はその『魔王』さんです?」
蒼唯がそう聞くとリリスは少し返答に詰まる。
「おそらく違うだろうって話だよ」
「おそらくです?」
【その者の『記録』を確認したところ、あの方にそっくりな姿形をした何かが権能を行使していました。しかし《アレ》は違います】
長い付き合いのあるリリスは断言する。見た目も能力も同一であると理解して尚。
リリスがそこまで言うのであれば違うのだろうと蒼唯は納得する。
「となるとどういうことです?」
「『記録の回廊』でそいつの足取りを調べたら、最後に訪れたダンジョンは『狂気の研究所』だってことが分かったよ。出てくるモンスターの中に『
普通のダンジョンではあるが、実験場じみた雰囲気のあるダンジョンであり、その雰囲気に適したモンスターが頻出する。
ダンジョンマスターの存在を知らなかった時の秀樹ならば特に何も思わないが、存在を知った今なら別の見方が出来る。出てくるモンスターはダンジョンマスターが産み出した生物兵器なのではないかと。
【そこのダンジョンマスターが、何かしらの方法で『魔王』の『
「なら攻略するです?」
【そのつもりなのですが…】
もし魔王の複製体が実在するとして、一体だけという保証は無い。どの程度の再現度かにもよるが、何体も現れれば流石の
「分かったです。攻略用のアイテムを造るですから、必要なアイテムの意見をくれです」
【あ、ありがとうございます!】
しかしここに蒼唯のサポートが加われば『魔王』が何体現れても大丈夫だろうという安心感が生まれるのであった。
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