第126話 探し者ガチ勢

 最近のリリスはダンジョンマスターとしての仕事をしつつ、蒼唯たちの世話をしに蒼唯の家に来ていた。しかしこれから『記録の回廊』を使っての黒幕探しを行う関係上、家にいることが減ってしまう。


【申し訳ありませんが、家事を行う時間が取れるか分かりませんので】

「ぬいー」

「まく~」

「仕方ないです。リリスはダンジョンの運営もやってるから本来忙しいです」

【すみません】

「『記録の回廊』は単純に映像を映し出すだけですから、人を特定するには時間が掛かるですよ。そもそも携帯を何処に置いたか分からんくなったときに造ったヤツですから」

【そのような理由でこれを…】


 蒼唯的に物探し専用のアイテムである『記録の回廊』はそこまで応用力が無い印象である。実行犯が黒幕本人から『災厄の小箱』を渡されてなければ、渡された現場まで赴きそこの記録を映しヒントを探す。これを繰り返していくしかない。

 黒幕の顔が判明してからは、リリスがこれまで魅了して下僕とした探索者業界の関係者たちのツテを使い探すと言っていたが、それにも時間が掛かるだろう。


「映像を映していられる時間が短いのが欠点ですね。その割に消費魔力は多いですから、乱発出来んです」

「ぬいぬい!」

「まく~」


 リリスは『夢魔姫サキュバスプリンセス』であり、一般的な探索者に比べれば遥かに膨大な魔力を有しているが、それでも消費魔力を気にせず使えるほど燃費が良いアイテムではない。

 しかしリリス以外にも協力者がいれば話は変わってくる。


「確かに『魔力炉』持ちのぬいたちが協力すればその分使用できるですね。それでいこうです!」

【よ、よろしいのですかぬい様、まっくよ様?】

「ぬいー」

「まく~」


 蒼唯関連の出来事以外には、ぬいはダンジョン攻略、まっくよは睡眠にしか関心を示さない彼らが、リリスの手伝いを自主的に申し出た。

 何となくで配下にしたリリスではあるが、家にいないと寂しいと感じるほどに懐いているぬいたちなのであった。


【ありがとうございます! ですが黒幕の目的も不明な今、蒼唯様をお一人にするのは危険すぎますので、まっくよ様には引き続き蒼唯様のお側に付いていただいて、ぬい様にご協力お願いしてもよろしいでしょうか?】

「ぬい!」

「まく…まくまく!」


 リリスの言葉に嬉しそうに反応するぬい。一方で納得しつつもリリスのお手伝いもしたいまっくよは、すこし考えた末に妙案を思い付く。


「こはくです? こはくのはトレジャーハンターですよ? まあ探すってなれば凄そうですけど」

「まくまく!」

「え、『名探偵』装備です? ああ、この前ハロウィーン用に幾つか造って送った中にそんなのもあったですね」

「ぬいぬい!」

「まく~」

「まあ坪さんと師匠にもリリスの件を話そうとは思ってたですし、その時に聞いてみるです。 坪さんも師匠も人脈が凄いですから人探しにはぴったりですし」


 その後、こはく本人と坪夫婦から了承を得たことで『吉夢の国』を襲った黒幕探しのメンバーは『記録の回廊』を持ったリリス、『魔力炉』持ちのぬい、『名探偵』こはく、飼い主付きという最強の布陣で行うこととなるのであった。


「最早『記録の回廊』使わなくても探し出せそうなメンバーですね」

【ありがたいことです】

「早めに見つけて『魔王』さんと関係あるか突き止めてくれです」

【はい!】


 

 



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