第125話 魔王の痕跡
『
「元の『災厄の小箱』は時限式です?」
【時限式ですか? それはどういう事でしょうか?】
「さっき『真理の眼』で見たとき、一定時間が経ったら開くように設定されていたです。なので時限式なのかと思ったですけど」
【そんな仕様は『災厄の小箱』には無かったかと。あるとすればこれを実行犯に渡した黒幕が細工したとかでしょうか?】
「細工って感じじゃ無かったですね。どちらかと言えば箱が命令されてたって感じです?」
【命令!?】
一定時間が経過したら開くように命令されていた。『真理の眼』を持ち箱を改造した蒼唯はそのように感じた。
「まあそう感じたってだけです」
【無機物に命令? いやしかし、】
「どうしたです?」
【元の世界に万物に対する命令権を有する者がいました。私やサタンのかつての上司であり、魔族の絶対的君主である『魔王』の称号を冠する方です】
「その『魔王』とやらが、リリスたちと同じようにダンジョンマスターになって、リリスの所に嫌がらせをしてきたです?」
【彼女は嫌がらせをするような性格でもありません。魔族としてあるまじき気弱さを誇る方でしたから。それに彼女は元の世界で封印されたままの筈です】
「じゃあ関係ないです?」
【…分かりません】
リリスの口調からその『魔王』に親しみを抱いていたことが分かる。
【物に命令する能力は他にもあるかもしれません。蒼唯様も時限式の『災厄の小箱』を造り出すことは可能ですよね?】
「やろうと思えば出来るですね」
【ですので可能性は低いと思います…】
まったく関係ない可能性の方が高いだろう。しかし、今回の件が『魔王』に関係しているのであれば、知りたいという気持ちをリリスから感じる。
であれば蒼唯がすべき事は自ずと決まってくる。
「その黒幕を探し出せば、『魔王』さん? が関与してるかも分かるですよね。もしかしたら封印から開放されてるかもしれんですし」
【え?】
「確か、『災厄の小箱』を持ってきた人たちは渡された人の記憶が無いって話だったですよね。ちょっと待ってろです」
【は、はい!】
いつもなら黒幕が誰であろうと興味が無い蒼唯だが、リリスのためであるならば仕方がないと言うことで、蒼唯は一肌脱ぐ事にするのであった。
蒼唯はアイテムの収納部屋から1つのアイテム持って戻ってきた。
「これは『記録の回廊』ってアイテムです。これを使えば対象の人の過去の記録を覗くことが出来るです」
【過去の記録?】
「そうですね。試しにやってみるです。『リリスがこれまでで一番驚愕した瞬間』!」
そう蒼唯が呟いた瞬間、『記録の回廊』はとある映像を具現化する。
それは蒼唯が『着せ替え部屋』を造り出した瞬間であり、リリスが蒼唯から神を感じた瞬間であった。
「あれ? 失敗したです? 何でもない日常が写し出されちゃったです」
【こ、これは?】
「対象者の見たい記録を映像として見ることが出来るですよ。なので『災厄の小箱』を持ってきた人には『災厄の小箱』を渡された瞬間とか言って使えば誰が渡してきたか分かる筈だったですけど…何か不具合でも起きてるです? 本当はリリスが一番驚いた瞬間の映像が映し出される筈なのにです」
蒼唯からすれば『着せ替え部屋』を造った瞬間などただの一日常である。しかしリリスからすればダンジョンの想像を目の当たりにした衝撃的な瞬間であった。
「うーん、造ってから時間が経ちすぎてバグったです? それとも私の滑舌の問題です?」
【蒼唯様、不具合ではありませんよ】
「そうなんです?」
結局、リリスが不具合ではないと言ったため、『災厄の小箱』を持ち込んだ者たちに『記録の回廊』を使うことが決まるのであった。
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