第103話 偉大な錬金術師
自分自身に『錬金術』を使用するという荒業で『
これが成功した要因の1つに、セルフ転職の要領が、ぬいたちに対して日常的に行っている事があったためである。
「ぬい、まっくよ。気持ちいいですか?」
「ぬいー」
「まく~」
「転職してメンテナンスの腕も上がってラッキーです」
【それでも、人体の構造をあまり理解されていない蒼唯様がご自身の身体に『錬金術』を施すのは危険な行為に変わりありませんよ】
『錬金術』を使う上で一番重要な事は、理解である。ぬいたちのメンテナンス等でスキルを扱う経験に加えこれまでの経験により、今回、ジョブを『錬金術』で上級ジョブにする事が出来た。しかし人体に精通していない蒼唯が、『錬金術』を失敗していた場合、『錬金術』で身体を修復することも難しいため、危険な状況に陥っていたことだろう。
「それは反省するです。それにこれからはこの眼があるですから安全ですよ」
【転職で新しく得たスキル『真理の眼』ですか。確かにその眼の凄まじさは『魔界』でもよく知られています。ですが私たちが言いたいのは――】
「分かってるです。もう危ないことは極力しないです」
【極力という言葉は引っ掛かりますが理解していただけたようで安心しました】
何だかリリスの性格が変化しているように感じる蒼唯であった。
『
『真理の眼』は鑑定系スキルの中でも上位スキルの1つであり、。これまで『錬金術』でなんちゃって鑑定をしていた蒼唯からすれば、かなり有用なスキルであった。
そしてもう1つの『魂への干渉』は、今回、蒼唯が行ったセルフ転職等、スキルやジョブへの干渉を補助するスキルだろう。システムの思惑はどちらかと言えば『錬金術師』なのでゴーレム系やそれこそ『
【ジョブシステムは、上級ジョブになってからゴーレム等を造り始める事を想定していたのではないのでしょうか? それを蒼唯様は、スキルの補助なしの『錬金術』のみでゴーレムや『
「よく分からんですね。まあ貰えるものは貰っとくですよ。最悪、今の私なら要らないスキルは素材に出来そうですし」
【既に習得したスキルを素材にする考えが普通の常人にはありませんからね】
と言いつつ言葉には出さないが、他の者が蒼唯と同じスキルを得ても、独創性に欠け宝の持ち腐れになるだろうと考えてしまうリリスは、相当蒼唯に毒されているのであった。
―――――――――――――――
セルフ転職とその後のぬいたちへのご機嫌取りに奔走し、そもそもの話を忘れていた蒼唯だったが、そういえば輝夜からされた『転職の神殿』云々の話がそもそもの発端であったことを思い出す。
「うーん、でも以外にジョブを弄くるの難しいですから、私が直接『錬金術』を行使しないと無理そうですね。私が『転職の神殿』を造れればダンジョンに行かない口実にもなったですけど」
【そうですか。やはり蒼唯様でもそれは難しいですか】
「なんか嬉しそうです? 特に別のジョブへの『転職』は無理そうです。ジョブを変更せずに強化する方向なら何とかなるですかね。スキルとかの強化とかも加えてです」
【『魂の修練所』...いえ、ですがそれらを造るとそのメンテナンス等も蒼唯様の仕事になってしまいますよ】
「あ、それなら無理ですね。となるとまあ断り方は決まってくるですね」
と言うことで、輝夜にメッセージを送ることにする蒼唯。
蒼唯:「学校でも断ったですけど『転職の神殿』には行かない事にするです」
輝夜:「りょーかい。でも今現地で、蒼唯に『転職の神殿』攻略を要請しろみたいな話が上がってるっぽいんだよね」
蒼唯:「なるほどです」
輝夜:「だからその内、蒼唯に直接話が行くかもしれないから、その前に私たちでと思ったんだ。普通のダンジョンと違うから蒼唯も興味持つかなとも思ったし」
蒼唯:「最近はダンジョンにも興味はあるですよ。まあ自分で行こうとは微塵も思わんだけです」
輝夜:「しょうがないね。ただ、公的な要請に興味がないとか嫌だからって返答すると凄いことになっちゃうから断りの文句はしっかり考えなよ」
確かにそれをすると子供が駄々をこねている絵面にしか見えない。しかしそれについては考えてある蒼唯。
蒼唯:「それなら考えてあるです。『転職の神殿』の話を聞いて、自分で転職出来ないか試してみたら出来たですよ」
輝夜:「は?」
蒼唯:「自分で『錬金術師』から『
元々は輝夜に対しての断り文句として考えていた文章を送ったのだが、輝夜からメッセージの返信が途絶える。
蒼唯:「大丈夫です?」
輝夜:「うーん、ごめんね。多分そっちで返答した方が凄いことになっちゃうよ」
蒼唯:「なぜです?」
なぜという問いは輝夜の方が聞きたい。なぜ『転職の神殿』の話題を出したその日に自分自身の力で転職が出来るようになってしまったのか。
その凄さをなぜ本人は全く理解していないような素振りなのか。
輝夜:「蒼唯だからなー」
蒼唯:「そうですよ。私は蒼唯です」
考えることが面倒になった輝夜は、蒼唯だからという一言で済ませる事にしたのだった。
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