第92話 絶対幸運
『機巧人形の採掘場』に向けて出発した2匹を見送る蒼唯とリリス。ぬいの首輪に付けられた『絶対幸運』のお守りを見つめるリリスの表情は暗い。彼女の不用意な一言で造り出されたお守りの効果を聞いてしまったためだ。
それでもって蒼唯の表情もそんなに明るくはない。
【『絶対幸運』って...】
「さっきも言ったですけど、運というのは難しいです。短期的には『幸運』でも長期的には『不幸』な場合もあるです。それこそまっくよたちがボスをたおしまくって『
【それくらいはダンジョンマスターの采配の範囲内です。まっくよ様の狙いが『幻想金属』だと見抜けばあり得るかもとは思います。ボスを執拗に狙われるのは私たちとしても採算が合わなくなりますし】
そうなってしまえば『幻想金属』のドロップ率は0%となる。確率を上昇させるアイテムがあったとしても0では意味がない。
そのため今回蒼唯が用意したのが『絶対幸運』のお守りである。
「だから用意したのが【絶対幸運】です。目的に合わせて一番幸運になる結末に着地する筈です。ただまっくよの頼みだったので少し張り切りすぎたですね。要素を詰め込みすぎたです。まさか『概念系アイテム』になっちゃったとはです」
【恐ろしい性能ですからね。あれで何度も使えたらおかしいとは思いますが】
「おかしいですか? いつかは造りたいですけどね。取り敢えず『絶対幸運』が通用すればまっくよが『幻想金属』をお菓子にすることくらいは困らなくなる筈です」
【そもそも『幻想金属』をお菓子にというのがおかしいと思いますよ。この前メッセージのやり取りをしていた方も驚いていらっしゃったでしょう?】
『絶対幸運』がどのように作用するかは不明であれど、蒼唯とリリスは、まっくよたちが満面の笑みで『幻想金属』を持ち帰ってくることを疑いもしないのであった。
―――――――――――――――
『機巧人形の採掘場』に到着したぬいは、隣でどんどん不機嫌になっていくまっくよを宥めていた。
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『機巧人形の採掘場』では鉱夫の役割を『機巧人形』が担っていた。こちらに気がつけば持っているピッケルを構え戦闘体制を取るが、本業は採掘なのだろう。
そういった作業を『機巧人形』は得意としている。『機巧人形』は眠らない体質であるが、更にスキル『
ぬいがそうであったように魂が宿っている『機巧人形』たちも、魂は磨耗していくだろう。『仕事中毒』によりその磨耗具合は他と比較にならないかもしれない。ダンジョンであるため磨耗しきってしまえば交換等も可能であろうが、それを眠りを司るまっくよは許せない。
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まっくよは、決意する。この眠りも休みもせずただ働いている『機巧人形』たち全員と、こんな環境のダンジョンを運用しているダンジョンマスターに『眠り』の素晴らしさを教えてやると。
そのため我が儘をまっくよが言いそれを了承するぬいと言う、いつもと逆の構図になるのであった。
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