第90話 情報交換

 蒼唯は柊に『幻想金属オリハルコン』の加工方法について説明した。勿論、蒼唯が1人で加工した力業ではなくリリスから教えて貰った複数人での加工方法である。


蒼唯:「それで、『変幻自在』で加工しやすくしてる間に『鍛冶師』が鍛錬すれば良いです。どれくらい魔力が必要かとかはそれこそ魔力を込める人の練度によるですから何とも言えんです」


柊:「アオっちは1人で加工出来たんだよな」


蒼唯:「そうですね。いつもより沢山魔力使ったですから疲れちゃったですよ」


柊:「了解。最悪こっちで加工出来なくてもアオっちに依頼できそうで安心したぜ。それで、『幻想金属』で何造ったんだ?」


 『機巧人形の採掘場』は今注目の狩場であるため、今後買い取りを増やすかどうか思案していた柊だったが、蒼唯の一言で買い取り強化を決める。

 そして柊が気になるのは蒼唯が『幻想金属』でどんなトンでもないアイテムを造り出したかであった。蒼唯であれば柊の予想など遥かに飛び越えた代物を造っていることだろうと思っていた。しかし当の本人の答えはそれこそ予想外であった。


蒼唯:「何も造って無いですよ。あれ? あれっていつも通り分析用にくれたもので、終わったら好きに使って良い感じですよね?」


柊:「あ、ああ。別にあげたモノだから何に使うかはアオっちの自由だぜ。でも何も造ってないのは意外だったぜ。当然のごとく何かに使ってると思っていたぜ」


蒼唯:「使いはしたです。あ、その事で聞きたいことがあったですよ。貰った『幻想金属』をまっくよにお菓子として与えたら気に入ったです」


柊:「ほうほう。え、うん? お菓子?」


蒼唯:「はい。それで、えーと『機巧人形の採掘場』で『幻想金属』ってドロップしやすいです?」


柊:「食べたの? まっくよが『幻想金属』を?」


蒼唯:「え、はいです。煎餅みたくバリバリ食べたです。それで気に入ったまっくよが『幻想金属』ドロップしたダンジョンに行きたがってるですよね珍しく」


柊:「何に驚けば良いのか分からんぜ。取り敢えず『ぬいぐるみ』に金属を与える絵面はヤバいぜ」


 『ぬいぐるみ』のまっくよが『幻想金属』をバリバリ食べる事をおかしいと思わない蒼唯が悪いのか、そういった常識を蒼唯に求めている自分が悪いのか。『ぬいぐるみ』なのに『幻想金属』をお菓子感覚で食べてしまえるまっくよが、凄すぎる余りそんな無駄な事を考えてしまう柊。


蒼唯:「柊さんには話したですけど、『迷いの館』でまっくよが強化されたですよ。そしたら『幻想金属』も食べれるようになってたみたいです」


柊:「そうか...それもあったか。巷で真の『ダンジョンブレイク』は探索者がダンジョンを崩壊させることだって主張する頭おかしい奴らを量産させたアレか」


 ただ改めて考えてみれば今年に入っただけでも蒼唯には何回常識を破壊されたか分からない。『迷いの館』の事件もそうである。そんな蒼唯たちのやることに一々驚いていては身が持たない。

 そう思っていても予想外の角度から次々にやらかす蒼唯たちに毎回驚かされてしまうのだが。


柊:「『幻想金属』は『機巧人形の採掘場』のボスのレアドロップみたいだから、ドロップ自体は何回もボスを倒していけばドロップするんじゃない?」


蒼唯:「レアドロップ...運が必要なんですね。了解です。ありがとうです」


 そうやってメッセージは終わる。柊は次、何かに起こるとすれば『機巧人形の採掘場』だと確信するのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る