第79話 3匹の探索

 ダンジョンには隠しギミックが多く存在している。その中でも『迷いの館』のようなテーマダンジョンは、ミッションとミッションの間にモンスターもトラップも存在しないフィールドも少なくない。そんな何もないと思われる空間に実は隠し要素が存在するなんてことは少なくない。

 何もないと油断していると不意の隠しギミックに引っ掛かり予想外の展開を強いられる者も多いため、その存在自体は驚くことでもない。しかし『人狐の管理室』という中ボス部屋に隠しギミックがあることには、探索者としてそれなりのキャリアのある秀樹やそれを聞いた優梨花も驚きであった。

 

「ボス部屋は、ボスを倒せば安全地帯になるから他より念入りに探索される場所なのよ。『迷いの館』みたいに幻惑系のスキルやギミックが多いダンジョンは、不意打ちを警戒して他の場所でのんびり出来ないから特に探されてた筈なのにね」

「なるほどです。じゃあそのギミックを見つけたこはくが凄かったってことですね師匠!」

「まあそうね...」

 

 一番の要因は『財宝探索家セット』なのだが、それは言わないでおく優梨花。


「直ぐに戻ってこないってことはお宝部屋みたいなのじゃなくて更に奥へ強制的に連れてかれてるか、そうじゃなければ隠しルートが考えられるわよね。斥候役がいないから秀樹さんたちに進んでもらう訳にも行かないし」

「ぬい、まっくよ、こはく。この3匹ならまあ何とかなると思うです」


 蒼唯の装備により強化されているこはくの凄さは、秀樹から聞いているのだが、それでもこはくが心配で堪らない優梨花を励ます蒼唯であった。


―――――――――――――――


 謎解き系のミッションをクリアする事で進んでいく『迷いの館』本ルートとは少し趣が異なり、モンスターも謎解きギミックもかなり攻撃的な仕様になっている隠しルートを進む3匹。

 そんな攻撃的なモンスターたちは、ぬいとまっくよに蹴散らされ、解除に失敗すればかなり危険な仕掛けである幻影トラップも、こはくが尽く解除してしまう。


まっく~まったく~

ぬいごめん

わふぅぼくも

まくまくまく~あとであやまろ~


 余裕そうな3匹は気が付いていないが、この隠しルートはモンスターもギミックも本ルートよりも強化されている。

 このルートに繋がる隠しギミックの発見難易度が高かいだけあり、この隠しルートの適正レベルも本ルートより高めなのだ。


まくこれまくまくアオのおかし~」

ぬいおお! ぬいぬいたべよたべよ

わんわんおいしそ!」


 3匹の攻略風景を見ているととてもそうは思えなくなる。とは言え、ダンジョンを幾つも攻略というか崩壊させてきた実績のある2匹と、『従魔競技会』で歴代トップクラスの成績を修め、尚且つこれまで多くの探索者が見つけられなかった隠しルートへの入口を見つけたこはくである。

 可愛い見た目に騙されてはいけない。


【貴様ら! ここは先代――】

まく~ねろ~

【様の...ぐぅ】

わんわんすごい!」

ぬいぬいあれずるい


 まっくよの一撃必眠を初めて見たことで興奮しているこはくと、よくそれの餌食となっているためか不満気なぬい。

 実績も能力もトップクラスの探索者なのだが、彼らを見ているとそういう事実を忘れそうになってしまうのである。

 

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