第76話 常識破壊
蒼唯から旅行の保護者枠として坪夫妻を確保したとの連絡を貰った輝夜は、直ぐに秀樹にメッセージを送る。
輝夜:「お久しぶりです先生! 今回は私たちと一緒に旅行に行ってくださると蒼唯から聞きました。何卒よろしくお願いします!」
秀樹:「よろしく。『迷いの館』に行くんだよね?」
輝夜:「はい! でも折角先生が一緒に探索してくれるなら別のダンジョンの方がいいかなって思ってるんです。中ボス撃破くらいを目標にしてましたけど、先生も一緒だと少し簡単に成ってしまうので」
『迷いの館』は謎解き系のテーマダンジョンであり、少人数でもある程度の攻略は可能である。ただ後半の謎解きは罠解除等の専門である斥候職がいなければ、クリアが困難な難易度である。
かといって中ボス撃破レベルだと、輝夜と『茸師』等のバグ技を禁止したぬいのペアで十分なレベルである。そこに秀樹とこはくが組合わさると少し簡単に成りすぎてしまうのだ。
秀樹:「それについては...大丈夫だよ」
輝夜:「もしかして斥候役に心当たりが? でも折角の先生とのダンジョンなので、他人を呼ぶのは...」
秀樹:「うん? ああ違うよ。参加するのは僕とこはくだけ。この前、蒼唯に貰った『
輝夜:「え、そうなんですか! こはく君が...」
輝夜が秀樹に戦闘やダンジョン探索を教わっていた頃から秀樹に背負われていたイメージの強いこはくが、斥候役を担っているイメージが持てない輝夜。
しかし五感に優れた犬が斥候役というのは理に適っているかもしれない。罠解除をする犬の姿はあまり想像出来ないが。
輝夜:「でも確かに『従魔競技会』の『お宝さがし』でも大活躍だったですよね」
秀樹:「あの後、貰った装備を色々と改良してくれたんだよ。【もっと可愛いくするです】って言って。その時更に性能も上がってるからより頼もしくなってるよ」
輝夜:「流石ですね...それなら『迷いの館』の完全攻略に予定を変更しても良いですか?」
秀樹:「了解、準備しとくね」
ダンジョン探索において、パーティー編成のバランスは大切である。そもそも戦闘力がなければ話にならないが、出現モンスターによっては近接メインにするか、魔法メインにするか考えなければならず、罠が多いダンジョンなら斥候は必須である。ヒーラーや支援職もいると有難い。
しかし人数が限られたギルドや秀樹のようにソロ探索者は、そもそもそれらを考えるところまで行かない。相性の悪いダンジョンは攻略を諦めなければならないのだ。
改めて、そういった探索者の常識を装備品によって打ち砕く蒼唯は特別な存在だと感じる輝夜であった。
―――――――――――――――
そんな輝夜と秀樹が師弟トークを繰り広げている頃、蒼唯も優梨花とメッセージをしていた。
蒼唯:「師匠の家に付与した『3分クッキング』の使い心地はどうでしたか?」
優梨花:「揚げるとか焼くとか時間の掛かる料理すら絶対に3分で完成するのは、朝の急いでる時間とか特に助かってるわ。今度また料理の差し入れを持っていくわ」
蒼唯:「本当ですか? わーいです」
この前、突然訪問して『きのこソテー』を振る舞って貰ったため、そのお礼に蒼唯は、坪家のキッチンにダンジョン機能を付与したのだ。その中の機能の一つが『3分クッキング』。このキッチンで調理した料理はどんなモノでも必ず3分で完成するスキルである。
他にもモンスターの素材すら調理することがある優梨花にとって嬉しい機能が詰め込まれていた。
ただ、『3分クッキング』は並み腕前の『料理人』では使いこなせないスキルでもある。
それを軽々と使いこなし、料理にアレンジすら加えられる余裕を持つ優梨花も相当特別な『料理人』と言える。
優梨花:「そういえば、蒼唯の作品見させて貰って、かがり縫いで縫い目見せちゃう方が可愛いかなって思う点があったんだけどね」
蒼唯:「あれですか。ちょっと思ったですけどね...」
ただ蒼唯の師匠なだけあって、優梨花も自分の腕前には無自覚な所があるので、その凄さには気が付かないのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます