京都旅行編
第75話 きのこソテー
探索の相棒にトイプードルのこはくを連れている事で有名な坪秀樹は、いつも通りダンジョン探索を終えて帰宅したところ、来客がいた。
「蒼唯、それをお皿に盛り付けておいて」
「分かったです師匠!」
妻の優梨花と共に料理をしているのは、『蒼の錬金術師』として有名な蒼唯であった。
「わん!」
「ぬいぬいー」
「まく~」
勿論、蒼唯はペットの『ぬいぐるみ』たちも連れてきているようで、いつもは秀樹から離れないたがらないこはくも、いつの間にか2匹と戯れていた。
「えーと、どういう状況?」
「あ、坪さんです。師匠~坪さんが帰って来たです」
「あら、お帰りなさい。蒼唯が来てくれてるわよ」
「ああ、いらっしゃい」
蒼唯が坪家に遊びに来るのは、そこまで珍しいことではない。蒼唯は優梨花に対して師匠呼びするほど懐いているため、前までは頻繁に来ていた。それこそ蒼唯の幼馴染みである輝夜が『流星』に入るまでは、秀樹が輝夜に戦闘を教え、優梨花が蒼唯に裁縫や料理を教えるのが常であった。
「『エデンの園』関連で忙しいと思ってたけど、大丈夫になったのか」
「それなんです。私は特に忙しくないですけど、そのダンジョンに行ったぬいとまっくよが大量に茸を収穫してきたです。でも多すぎて私たちだけじゃ食べられないです」
「あー、ニュースになってたね。『エデンの園』が茸まみれって...え、ってことは?」
「そうなのよ。蒼唯からお土産にいっぱい茸を貰ったから、今日の晩御飯は『きのこソテー』にしたの」
「ちょっと生で食べるのは怖いですけど、『料理人』の師匠なら美味しくしてくれると思ったです」
優梨花のジョブは『料理人』。モンスター等から採取できる素材を使って料理を作ることができる。元々の料理の腕前も相まって優梨花のダンジョン飯は絶品だと評判である。
「まてまて、『エデンの園』で採取できた『能力上昇林檎』はデメリットがあるって話だったでしょ。その茸、本当に安全なの?」
「ぬいぬい!」
「この茸の安全は確認済みです。ぬいの『茸師』で宿主の林檎のスキル『能力上昇』と『成長制限』を持った茸を掛け合わせて、新しいスキル『すくすく成長』は付与されてるですけど、それに害は無いです」
「それに私の『料理人の心得』で変なスキルがあれば、分かるから大丈夫よ」
「そうかー、まあ確かに美味しそうではある」
「でしょ!」
テーブルに並べられた『きのこソテー』は、使われた茸が楽園を崩壊させた茸を元に栽培されているのを知っていても尚、食欲がそそられる匂いであった。
「それじゃあそろそろ夕御飯にしましょうか」
「わかったです! ぬいとまっくよ、それにこはくも、ご飯です!」
「ぬい!」
「まく~」
「わん!」
坪家に大量に持ち込まれた茸は、その日の内に大半が食べ尽くされるのであった。主にペット3匹によって。
―――――――――――――――――
夕御飯も終え、蒼唯が坪家自慢のソファーでだらだらタイムを満喫していると、まっくよが肩を叩いてくる。
「なんです?」
「まく~、まく!」
「ああ、そうでした。『きのこソテー』の美味しさに満足して本題を忘れてたです。...坪さん、師匠~」
坪家に来た目的を思い出した蒼唯は、こはくと戯れている坪夫妻に声を掛ける。
「どうしたの?」
「くぅん?」
「えーとです。今度、私と輝夜で旅行に行く予定なんですけど、坪さんと師匠も一緒に行かないです?」
「引きこもり体質の蒼唯が珍しいわね?」
「ご当地限定のストラップとか色々買いたいものがあるです。輝夜はご当地ダンジョン目当てですけど。そのダンジョンを坪さんと一緒に探索したいって言ってたです。予定が合えばどうです?」
2人は顔を見合わせ少し考えるが、直ぐに蒼唯の方を向き
「まあ折角のお誘いだしね」
「ご当地の食品とかも一緒に探しましょ」
承諾するのだった。
「やったです! 嬉しいです」
「わんわん!」
「おお、こはくも嬉しいですか!」
「こはくの方がうれしそうよ」
「友達と旅行なんて、こはくは初めてだろうからな」
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